第14話 敵は多い

 私はようやく怪我から復帰して学園に通うことになった。


 しかしシモンに


「お嬢様…護衛を少し増やしました」

 と言われる。


「まぁ…あの3人は何とかして私に復讐やジークフリート様を狙っているものね」

 と言うとシモンは


「それもそうですが、流石に怒らせすぎたかもしれませんから3人は全力でお嬢様を潰しにかかるかもしれません。お命に関わるような暗殺者などを雇っているかも。くれぐれも一人にならない様お願いしますね」

 と久しぶりにまともな事を言うではないか。


「一人にというか私は悪魔令嬢として嫌われる身…いつも一人というかあんたしか着いてこないわよ」

 と言うとシモンは嬉しそうに


「私はお嬢様の犬ですからね!隙あらば罵声を浴びせられながら踏まれたい!」

 といつもの様な変態になる。


「まぁ私ができる限りお嬢様をお守り致しますね!」

 とシモンは言う。別にあんたに守って貰ってもねぇ。ジークフリート様だったら嬉しいんだけど…私は彼に嫌われているものね。


 私が登校すると生徒達はざざっと綺麗に道を開けた。いつものことね。


 靴箱までの距離をシモンと歩く。

 するといきなり上から無数の矢が降ってきて…シモンは剣を抜き素早く矢を両断した。よく見ると矢の先に何か塗られている。毒かしら?


 矢が打たれた方向は西の階段塔だ!小窓から矢を放ってくるなんて姑息な!明らかに暗殺されそうになった!


「お嬢様!失礼!」

 ひょいとシモンは私を抱えて靴箱まで走った!


 矢が放たれるがひょいひょいとシモンは避けながら行く。後ろからキンキンと音がしたので護衛達が矢を相手にしているのだろう。


「まさか…登校した途端に命を取りにくるとはね」


「ですから狙われると言ったでしょう?」

 ストンと降ろされた所を


「あ、あああ…」

 と言う声と共にそこにジークフリート様が立っていた!青ざめながら。


「ごきげんよう!ジークフリート様」


「えっ!?あの…お元気そうで…」


「ええ、全快しましたわ。本日よりまた通えるようになりましたの」


「でもシモン様に抱えられて登校されるとは…まだ痛むのでは?」

 と言うとシモンはガラんと矢を投げた。


「!?」

 ジークフリート様が矢を見て何事かとチラチラ交互に見た。シモンは


「どうやらお嬢様は悪意に満ちた者に狙われた様で靴箱に来るまでに矢で狙撃されましてね。私は抱えてこちらまで走って来たのですよ」

 と説明した。


「え?なんで…マリアンネ様が命を狙われるのですか?」

 と青ざめるジークフリート様。


「あら?私の周りは敵だらけですのよ?悪魔令嬢らしいですから!!ほほ、面白くなくて?この私に刃向うとは…」

 と言うとジークフリート様は


「そんな!命を狙われて笑ってる場合ですか!!?もっとご自分を大切にしてください!!」

 と怒られる。ああ!怒ってるジークフリート様も素敵だわ。


 と靴箱を開けると…死んだカエルやら鳥やらが詰まり異臭を放っていた。シモンはサッと懐から


「こんなこともあろうかと新しい上履きを温めておきました!どうぞ!」

 と差し出した。いや、そんな所で温めないで!


「酷い…こんな事!虐め!?」

 とジークフリート様は怒る。まぁ私の為に怒ってくださるのね!


 矢を放ったのは

 リアの雇った暗殺者だろうし、靴箱の嫌がらせは腹黒そうなのでニーナ王女でしょうね。


「直ぐにでも私を排除しようとお考えの方が多いのでしょうね!心配なさらないで?」

 と言うとジークフリート様は


「なっ!何を呑気な!…ぼ、僕が…まも…」

 とそこで足元の糸に気付き私は


「危ないですわ!」

 とジークフリート様を押し壁にドンする形になり急接近!


 しかし糸に引っかかってその先に導かれたナイフがビュンと飛んでくるのをシモンがガキンと弾いて落とした!

 校内にも仕掛けがあったのね!


 ジークフリート様は私に壁に押さえつけられた様になりあわあわしていた。


「あら、失礼?」

 と内心ドキドキしながらもクールに退いた。


 そこへ通りかかりを装ったコンスタンティン先生が


「おやおや、これは!マリアンネ君!怪我が治ったのかい?しばらく休んでいたから大変学園は平和だったが…」

 とドス黒いオーラを放ちながら言う。


「あら…先生、ごきげんよう?お尻の方は大丈夫かしら?」

 と言うと先生は睨みつけ


「何のことかな?」


「事故に遭われたとか聞きましたので」

 実は私が休んでる時にシモンにはまたコンスタンティン先生が男性に襲われたと言う噂を流してもらったのだ。


「事故にねえ?……そうだ!これ!新作の俺特製の新鮮な栄養ドリンクだがぜひ今試飲してほしいね!」

 と私に毒々しい紫色のいかにも毒といったドリンクを渡した。


「さあ!グビっと飲んでくれ!」

 …こいつ…目の前で私を毒殺に来るとはいい根性しているわね!


「シモン!貴方が飲みなさい!?いろいろ働いて疲れたでしょ」

 と言うとシモンはうなづき喜び震えた。この毒を見て『お嬢様が私に毒を飲めとおっしゃられるなんて!』と歓喜してるだろう。シモンの手は震えてグラスを落として割ってしまう!


「あら失礼?うちの執事が割ってしまいましたわ」


「ちっ!」

 と舌打ちするコンスタンティン先生。


「ふっ、また作ればいいさ!!ではまた!」

 と去っていく。


「栄養ドリンク残念でしたね」

 とジークフリート様はこれが毒だと気付いてなくて天然で可愛いったら無いわ!!しかしシモンは


「ジークフリート様…ベッケル家の者がカウン家の者にプレゼントする時は命を狙っているということですよ。気付かなかったのですね。


 そこに落ちたものは毒でございます」

 と教えてやるとジークフリート様は青ざめた。


「ええっ!?ど、毒!?栄養ドリンクじゃなかったんですか!?」


「ほほ、ジークフリート様ったら…貴方は命を狙われたことがありませんからわからなくて当然ですわ!」


「そんな…先生が生徒を殺そうとするなんてそこまでの殺意を…」


「先生と生徒ですか…カウン家とベッケル家は天敵同士なのですから殺し合い…殺された方が負けですもの」


「!!」

 ごくりとジークフリート様は生唾を飲む。


「ジークフリート様と婚約破棄の条件が全部揃うのが先か私が死ぬのが早いかですわね、ほほほ!次の条件はまた考えておきますわ。では!」

 と私はシモンを引き連れ教室の方へと歩いた。まぁ大人しく死んでやるつもりも無いけどね。

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