第15話 第四の条件
相変わらず私への嫌がらせは続いていた。リアは素知らぬフリをして
「まぁ…お命を狙われていらっしゃるなんて…大丈夫なのですか!?」
と心配そうにするがこの女の演技であることはわかっている。
「あら、私の美しさに嫉妬する輩が多くて困りますわね!」
と適当にあしらう。虎視眈々と私の暗殺をしようと努力を続ける彼女に
「チェコバ伯爵家は暗殺拷問が得意な一族なんですってねぇ?どんな悪党も見逃さない…優秀な血を引かれて羨ましくてよ?ねぇ?リアさん」
と言うとヒクヒクとした笑いを堪えてリアさんは
「あらおほほほ!うちの家系…あまり表にそう言う面は出していないのによくお知りですわね!流石マリアンネ様ですわ!」
と言うから私は
「お友達のリアさんのことをよく知りたくてね。あら私とお友達は迷惑かしら?」
「そんな!光栄ですわ!!」
と頭を下げるリアさん。
「まぁ…仮のお友達でも私は気にしませんのよ?在学中に楽しいお友達がいて嬉しいわ」
と言うとギリっと唇を噛み締めリアさんは
「おほほほ。マリアンネ様ったら…本当に周囲に気を付けてくださいね?私もお友達が死ぬのは悲しいですわ!…では私はこれで」
とサササとリアさんは逃げて自分の執事の所へ行く。
そこへ毒蛇が現れてシャーと牙を向いた所をグサっとシモンが剣で突き刺す。
「これは南の方の国に生息している珍しい猛毒蛇です!こんな蛇がこの国にいる事はありませんが不思議ですね」
「まぁ…どっかの暗殺に得意な人なら入手など簡単でしょうね」
と言う。
「…少量の死なない程度の毒でしたら私が飲んでもがき苦しむ様を見ながら辛辣な言葉で責め…私を踏んづけてくださってもいいのですよ?」
と言う変態な執事に
「そうねぇ、この頃コンスタンティン先生も毒にハマってるらしいし…もしかして毒殺って流行なのかもしれないわ!どうしましょう?私…乗り遅れてる?
そうねえ死なない程度の毒をジークフリート様からお二人にお渡ししてもらいましょうか」
「おお、恐ろしい事をお考えになるお嬢様…ナイスですね!では第四の条件はそれですね!」
「ええ、よろしく頼むわ!」
「はい、因みに死にはしませんが一週間は身体に麻痺が残るでしょうね!」
とシモンはニコリとして手紙と毒薬の買い出しに出かけた。
*
「第四の条件てお二人にこの栄養ドリンクをお渡しするって言う…のでいいのですか?いつもより簡単そうですがいいのでしょうか!?直ぐにクリアしちゃいますよ?」
と言うジークフリート様に私は
「ええ、とても簡単な事です。昨今栄養ドリンクと見せかけた毒殺が流行のようでして」
と私がニコリと言うと青ざめるジークフリート様。
「えええ!?こ、これ毒!?そんな!僕に毒殺をしろとマリアンネ様は仰ってるのですか!?」
とガタガタ手が震えるので私は毒を落とさぬようガシっとその手を取る。
遠くにいる護衛に聞かれるよう耳元で
「お嬢様を殺そうとなさってるコンスタンティン先生とリア様にプレゼントするだけですよ…それにお嬢様はお優しいので本当に二人を殺害しようとは思っておりません。目には目を、毒には毒をでして…この毒は死に至る量ではありません。一週間ほど麻痺が残るくらいです。
実行するかしないかはジークフリート様次第です。お嬢様と婚約破棄したいのですよね?」
と囁く。
ジークフリート様は震えながらも…チラッと護衛の方を見て…決心したようだ。
なるほどね。と私は何故ジークフリート様が婚約破棄したがっているのかの理由を察した。
この事をお嬢様が知ったら大変お慶びになりご褒美に私を踏んで下さるかもしれない。
「わ…わかりました…。やってみますけど…僕が牢屋に入る事になったらごめんなさい…」
と覚悟を決めたようだ。
「ご安心ください。カウン家の名にかけてそんな事にはならないとマリアンネ様は申しておりました」
「え?それはどういう…?」
ふふふと私は笑い
「ジークフリート様には誰も手出しできないと言う事です!カウン家を舐めないでください」
と私が言うとようやく
「えっと…僕が手を出してもカウン家が守ってくれると…言うこと…?」
と理解してくださった。
「ええまぁ、大切な婚約者様ですしね、妙な噂は全力で悪魔令嬢様が打ち消します」
「そ、そんな…では僕でなくても…」
私は首を振り
「ジークフリート様でなくてはあの二人は反省しませんよ」
と言い、私は
「ではクリア頑張ってくださいねー!」
と手を振りお嬢様の元へと帰る。
*
その後…シモンから毒薬を渡されてジークフリート様はなんとかコンスタンティン先生とリアさんにお願いして目の前で飲んでもらい二人はジークフリート様のお願いを断ることは出来なくてそれが毒と気付きながらも飲み干してぶっ倒れた!
予想通り二人は死にはしないものの一週間麻痺で動けなくなり暗殺は止まった。ざまあですわ。
ジークフリート様は罪悪感を感じて苦しそうだったので慰めの言葉をかける。
「ジークフリート様。条件はクリアしましたのでそんなに気になさらないことね?そんなに心苦しいなら私を一思いに殺す猛毒薬をこの場で飲みましょうか?」
とシモンに命じシモンはグラスにトクトクと毒を入れるとジークフリート様は青ざめてそのグラスを芝生に捨てた!
「やめてください!!マリアンネ様が死んだら次の条件を飲めません!」
「私が死んだら即座に婚約破棄できるかもしれない絶好の機会でしたのにいいのですか?」
と溢れたグラスを見る。するとジークフリート様は
「そんな事で婚約破棄になっても…僕はずっと後悔しますし…」
「まぁ…確かに婚約者が毒殺されたなんてこと世間に広まるとジークフリート様がお可愛そうですしね…」
と言うとホッとしてジークフリート様は
「命は大切にしてくださいね…」
と言われキュンとする。もうキュンで何回私を殺す気なのかしら?ジークフリート様は。
「次の第五の条件は私が疑似誘拐されますので制限時間内に助けだせたらクリアですわ」
と次の条件を言う。
「えっ!?疑似誘拐!?」
「ええ、ネタバレになりますが擬似とわかっているのだから助け出すのは簡単ですわよね?場所は当日お手紙で知らせますので少々お待ちになってね?
うふふ」
と楽しそうに笑うとジークフリート様は何故か照れて
「擬似ならまぁ…なんとかクリアして見せます!」
と意気込んだのだった。
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