第16話 塔の上のお姫様ごっこ!?(ジーク)

 後日…マリアンネ様からの手紙が届いた。第五の条件内容はマリアンネ様の疑似誘拐で僕が助け出すって事だけど、詳しい場所や日付を手紙を開いて確認していく。


 今回は疑似誘拐だってわかってるし随分と簡単にクリアできるかも……と思っていたのだが…


 ー怪人シモンよりジークフリート様へー


「えっ!?怪人!?何のこと!?」

 いきなり何の話だ!?とにかく続きを読むと…


 ー貴方様の婚約者…銀の髪に赤い瞳のマリアンネ姫は怪人シモン・デ・ペッチがいただいた!


 返して欲しくば廃墟…ベルナの塔の最上階まで来るがいい!


 日時は青の月の15日…時間は日が落ちた深夜23時から0時までに最上階まで来てマリアンネ姫を助け出すこと!


 制限時間内にたどり着けなかった場合…または午前0時になったら私は姫に口付けする!


 ということで待っているぞ!


 怪人シモンよりー


 と書かれていた!!


「は!?ま、待って?廃墟のベルナ塔!?そこって確か…現代で言う心霊スポットみたいな所だよね!?近寄る人居ないって聞いたけど!それに姫とか怪人て何!?何の遊びなの?」


 疑似誘拐だからってそういう設定なの!?完全に僕遊ばれてない!?

 …でも流石に1時間もあれば上まで辿り着くだろうけど……マリアンネ様のことだから罠とかいっぱいありそう!!大丈夫かな!?


 そそそれに!なんなの!?口付けって!?キスのことだよね!?何でそんなこと!?本気なのかな!?


 と…なんかシモン様とマリアンネ様がキスしてる光景が頭に浮かび僕の心臓が痛む!ていうか以前から思ってたけどやっぱりシモン様マリアンネ様のことを絶対好きだ!グレゴールだって好きだしやっぱり美人だからモテるんだ!


「ううっ…胸が苦しい…」

 となんか僕は部屋で悶えた。グレゴールにもこの事を伝えなきゃな…。


 と次の日にグレゴールに言ってみると…彼は


「…あのシモンとか言う執事…どさくさに紛れてマリアンネ様と口付けしようとしてるだとおおお!?許せん!!ジーク!俺もついて行かせてくれ!絶対阻止するぞ!!」

 とメラメラと燃えている。僕は断りきれず深夜だけど侯爵家をそっと抜け出してグレゴールと共に廃墟のベルナ塔に行ってみる。


 ランプで周囲を照らすと瓦礫を避けた先に塔への入り口があった。

 その時最上階から声がする。

 マリアンネ様とシモン様?だ。

 シモン様?は顔に仮面をつけてた。


「あれー…助けてー!ジークフリート様ー!」

 めっちゃくちゃ棒読みのマリアンネ様。


「はっはっはっー!!貴様達は時間内に最上階にたどり着くことはできまい!有りとあらゆる仕掛けに最強の下僕がたち塞がり邪魔をするでしょう!


 それでは用意はいいかな?」

 と仮面のシモン様が銀の懐中時計を見て


「それではスタート!!」

 と言って頭を引っ込めた。マリアンネ様が


「あれー…助けてー。早くー」

 とまた棒読み台詞で言う。ええー!?シモン様はそこそこ上手かったのにマリアンネ様こういうのは下手なんだな!

 と思ってたらグレゴールが


「ひ、姫!可哀想に!」


「えっ!?」


「見たか!?ジーク!?あの怯え切った顔!あのふざけた仮面野郎が!許さんぞ!絶対に口付けから守るぞ!」


「あ…う、うん」

 ええ…グレゴール…マジか!?あんなごっこ遊びを本気で…。


 しかしグレゴールも本気だ。


「と、とりあえず中入ろう」

 と言うと


「よし!行くぞ!」

 とグレゴールが先頭で突入したその瞬間頭上から赤いものが顔にかかり…

 見上げると天井から吊られた逆さまになった女の人がいてニヤリと不気味に笑った。


 グレゴールが静止したので声をかけると立ったまま白目で気絶していた!


「グレゴール!?グレゴール!!」

 バタンと倒れて動かない!!

 ええええええ!!!グレゴールって幽霊苦手なんだ!!初めて知ったよ!!

 とりあえずグレゴールを脇に避けた。グレゴールを引きずって重くて息が切れた。グレゴールの剣を借りて


 それからぶら下がってる女の人に


「失礼します」

 と礼をして横を通ると、女の人は鼻を押さえ


「はあん…」

 と言ってポトリと落ちた。

 !?

 なんだかわからないが先に進む事にした。あんな下手くそな演技でも時間に間に合わなかったら…シモン様とマリアンネ様はキスしてしまう!クリアできないと…。


 階段を上っていくと今度は何かヨロヨロと鎧を纏った人が現れた。兜まで被りどうやら男の人みたいだがモゴモゴしており…。その人は自分で足を踏み外し


「ふごおおおおおお!!」

 と言い、転がってきて僕は避けるので精一杯だった!

 結局下まで落ちてピクピクして動かない。


「な…何だったんだろ??」

 その後もボコっと一段階段が崩れ落ちたり、いきなり斜面になり上りづらくなる。


 体力もきつい。

 罠が気になり上手く進めないけどそこで声がした。


「そろそろ0時に近づいてきたなあーー!!」

 えっ!?もうそんな時間!?僕は自分の懐中時計を確認するとなんと後10分程だ!階段はまだ後もう少しある。

 急がなきゃ!

 クリアできなかったら……マリアンネ様がシモン様と!い、嫌だ!そんなの!見たくないし!


 と急いで駆け上がる。

 壁に目玉のオプジェが貼り付けてあってびっくりしたけど無視して急ぐ。


「後もう少しだよ!!」

 ととうとう最上階の扉が見えてきた!!


 扉の前には木の文字があり、ある言葉を並べてそれが解けたら扉が開くらしい!?と張り紙があった。


 中から


「残り3分ーー!」

 と声がして僕はパニックになりながらも文字を並べ替えていく。


「ええと…うんと……マ?あっ!!」

 最初の文字はマリアンネと並べられた!!後は…


 るいあして…。


 ……。


 なんか恥かしくなった。こここれって!


 マリアンネ…愛してる!?

 ひいいいい!!


「残り20秒ーー」

 と言われて仕方なく並べ替えてカチっと音がして僕はバンと扉を開く!


「マリアンネ様ーー!!」

 そこにはシモン様が仮面を取りマリアンネ様を抱き抱えキスする寸前であった!!


「おや…残念。間に合ってしまいました…」

 と言うとマリアンネ様がシモン様の腹を思い切り殴り付け


「ああっ!」

 とシモン様はなんか幸せそうな顔で倒れた。


 そしてマリアンネ様はなんか怖い顔をして


「遅いですわ!!後20秒とか!ギリギリでしたわ!!」

 と怒られ僕は謝罪した。


「ごっ…ごごごごめんなさい!!」


「まぁ…間に合ったのだからクリアですわね…おめでとうございますジークフリート様」


「あ…はい…」

 何故かやはり胸が苦しい。クリアする事に感じてしまう。


「因みに下で伸びてる鎧の男は実はコンスタンティン先生で幽霊役の女はリア嬢なのよ?お二人にも協力してもらったわ」


「ええええ!あの人達が先生とリア様!?」

 驚きでいっぱいだ!

 するとマリアンネ様はにこりと笑い水差しから水を注ぎ僕にグラスを渡す。


「喉が渇いたでしょう?汗もたくさん…ごめんなさいね。お着替えも用意してますわ」

 と綺麗な服まで貰った。


「ありがとうございます…」


「下に馬車もお呼びしましたから明日はゆっくりお休みになって?」


「はい…」

 マリアンネ様はシモン様を起こし


「帰るわよシモン。ではジークフリート様また」

 と礼をする。何となく僕は横を通り過ぎる彼女の手を掴みその手の甲にキスをし


「おやすみなさいませ!マリアンネ様!」

 と言うとマリアンネ様が…ぼっと赤くなったのが意外でポカンとした。


 可愛い…とドキュンと心臓に矢が刺さったようだ。


 マリアンネ様はパッと手を離しいつもみたいにキリッとすると


「おやすみなさいませ!ジークフリート様!!」

 とくるりと後ろを向きシモン様と帰って行ってしまった!


 あああ…何か見ちゃいけないもの見ちゃった!?どうしよう…。

 僕は急いで着替えて下に降りて行くと先生もリアさんも消えており、グレゴールだけまだ気絶して壁に寄りかかっていた。


「グレゴール!大丈夫?起きて」

 と起こすとやうやく


「大丈夫だ!よし、姫を助けに行こう!」

 と塔の上の方を見上げる。


「あの…グレゴール…君が気絶してる間にもう終わったよ」


「え!?まさか…間に合わなかった!?」


「えと…間に合ってもうクリアしたよ?」

 と言うとポカンとして


「何だ…良かったな!!これで後少しだな!んじゃ帰るかジーク!」

 と言い僕は親友に悪いなと再び罪悪感に満たされたのだった。


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