第27話 僕の悩みは一体…!?(ジーク)
その日第九の条件をクリアして僕は…シモン様のパイを実はマリアンネ様が作ったと嘘をつきグレゴールに渡し、シェフの作ったものを家族に分け与え…マリアンネ様の作ったものを自分の部屋で夜食として置いてもらった!
「僕ってなんて浅ましいんだろう!!」
でもマリアンネ様の作った手料理の貴重なミートパイを独り占めしたい!パイを当てたのは偶然だけど…。
やはり好きな人の作ったものを他の人に食べさせたく無いという心の醜さに僕は食べながら落ち込む。こんなの彼女に嫌われて当然だ。
「はああ」
次で最後かと思うと泣けてくる。食べ終わるとグレゴールがノックした。
「どうしたの??グレゴール?」
まさかパイがシモン様が作ったとバレたんじゃ!?
「聞いて欲しい事があるんだ!」
と真剣な顔!うわ!バレた!パイのこと!?
「ななな、何!?」
とビクビクしつつも聞くことにした。
グレゴールは
「ジーク…実は…俺………恋人ができたんだ!」
と言った。
え!?
一瞬こいつ何言ってんの?
と時が止まりかけた!!
「は?え?え?まさかマリアンネ様に告白したとか!?」
と聞くとグレゴールは
「いや、違う、確かに好きだったが…よく考えたらあんな高貴で美しい人、俺がどうにかできるわけないと悩んでいて…幼馴染のフリューカに相談していたんだ…」
フリューカさん…てうちの領民で平民のあの?確か昔数度グレゴールと一緒に遊んだ記憶があった!
グレゴールの家と近く二人は幼馴染で仲良さそうで入ってけなかったもんなぁ。
…ってちょっと待ってよ!!
「あの!グレゴール!そ、それじゃあもうマリアンネ様のことは…」
「すまないジーク!俺たちもうキスもアレも済ませて今凄く幸せでラブラブのアツアツなんだ!!
マリアンネ様のことはとっくに諦めてたよ。言い出すのが遅くなってすまない!!」
いや、本当に遅すぎるよ!!いつからそうなってたの!?人が必死にクリアしてたのにグレゴール!!もう次で僕婚約破棄されちゃうのに!!
「でもジークもあれだろ?マリアンネ様の悪魔的な美しさには釣り合わないってよく言っていたしさ!俺は最後まで応援してるぜ!婚約破棄!!
頑張れよな!!残り一つクリア!!」
と応援され、グレゴールはこの後も逢い引きががあるからとルンルンと部屋を出て行った。
「はぁ?何だあいつ!?」
初めて幼馴染のど天然身勝手さにムカついてきた!!僕はお前の為にこれまでこの恋心を抑えて必死に婚約破棄しようとあんな条件までのみクリアして来たのにここに来てフリューカさんとキスとかあんなことやこんな事をしてるだと!?
「ふふ、ふざけんなーーー!」
と思わず一人叫んだ。
どうしよう。今更…次の条件は無しにしてくれ、婚約破棄も無しにしてくれ!などと言う勇気が僕にあると思っているのか!?婚約破棄の為ならどんな条件でも飲みます!とか言った自分を殴ってやりたい!!
「くっ!グレゴールめ!自分だけ何幸せに落ち着いてんの!?今もラブラブしてると思うと腹立つ!!
くっ!友情なんてこんなあっさり裏切られるもんなのか!!」
と一人叫ばずにはいられなかった!
*
それからしばらくもんもんと僕は過ごした。中々次の条件が来ないし僕も何とか婚約破棄は無かったことにしたいと言い出せないし、僕の護衛がグレゴールから違う人に交代して、たまにグレゴールがフリューカさんと放課後デートしてるのを見かけてギリギリした。
周辺を巻き込むくらいハートがあの二人に飛び交っているではないか!
あ、あいつうううう!!
いやもう忘れよう。あんな裏切り者!
もはやどんどんグレゴールの評価は僕の中で下がりつつあった。
新しく護衛に着いてくれたのはライアス・ブレンドラーと言う男であり妻子持ちの大人のおじさんだ。
「若いっていいですね。おじさんになると若い時もっとあれをしていればよかった。これをしていればよかった…などと後悔ばかりです!
今の妻もね。別に好きで結婚したわけでなく見合いでね、我儘であれを買えこれを買えって高いものばかり要求して…やはり愛のある結婚の方がいいですよ。
ジークフリート様も後悔しないよう生きてください…俺みたいに死んだような毎日送るんじゃなくて」
と若干暗めな疲れたおじさんライアスは言う。
「あのさ、ライアス…どうしたら後悔しなくていいの?」
と聞くと
「行動あるのみですね。一歩踏み出すのと踏み出さないの違いは大きいです。それによって将来がどうなっていくかが決まってしまう。悪い方向か良い方向かはわかりませんが私は…今、後悔していますからね。
あの時見合い断ってれば…「あの時」は二度と戻らない…。後悔はしない方がいい」
とライアスは死んだ魚のような目で言う。
しかしそうだよね。グレゴールはもうマリアンネ様のことは好きじゃないし僕が婚約破棄する理由も無くなったんだ!ち、ちゃんと言おう!この話は無かったことにしてもらおう!!
と決めたところで第十の条件がとうとう来てしまった!!ひええええ!!!
封筒を開ける手が震えた。
シモン様がにっこりと
「これをクリアすればようやく婚約破棄できますから頑張ってくださいね!」
と追い打ちをかける!!
ううう!
「おや?顔色が悪いですね?……何か悩みがあるなら聞きましょうか!?」
と言われて僕はもう一人で抱え込むのに限界でついに恋敵のシモン様に話してしまった!!
「なるほどー、そう言うことですか!あっはっはっはっ!」
めちゃくちゃ笑われた!!
「そ、そんな笑うこと…」
と言うとシモン様は
「まぁ…ジークフリート様がお嬢様の事を好きなことは気付いてましたからね」
「ええええ!?鋭いっ!!まさかマリアンネ様にもバレて!?」
「いえ、うちのお嬢様は気付いておりませんよ?ジークフリート様は自分のことを嫌いだと思い込んでいるからこそ条件を出しているのですから」
「でででですよね…。マリアンネ様は僕の為を思っており…お優しいのに…」
元々僕のこと嫌いなのに普通に婚約破棄するとマリアンネ様にも都合悪いからここまで付き合ってくれたのに。
「まぁ貴方もこないだまでは親友の為に頑張ってらしたのにね」
と言うシモン様につい愚痴を溢す。
「もう親友じゃないです!あんな裏切り者!今だって僕がこんなに悩んでいるのに恋人とイチャイチャと!!」
と言うとシモン様は
「…恋人に成り立ての頃はとても激しい人もいますからね。二人の時間が必要なのでしょう」
「ううっ…。僕は一体どうすればいいんでしょうか!?」
と言うとシモン様は
「そうですねぇ、次の条件をクリアした時…どさくさに紛れて無かったことにしてもらい…思いを告げるしかないでしょう?」
と言う。
「シモン様は…もし上手く行ったら怒らないのですか?貴方もマリアンネ様のことを…」
「ええ、もちろん好きでございます!でも私の夢は歪んでおりますこと知っているでしょう?踏まれることなんです!クリアしたらマリアンネ様は踏んでくださると約束してくれたので踏まれた時点で私の夢は叶い同時にこの想いも消えます!」
どうしよう言ってる意味がほぼわかんない。
「私は幾度となくお嬢様に思いを告げてきましたが幾度となく鼻であしらわれました。それもまた快感でしたがその生活もクリアして私の夢が叶うと終わりです。お二人を見ていたらもどかしくて!!つい応援したくなります!」
「シモン様…」
「次のクリア頑張ってください!簡単ですよ!!ボロボロの橋を渡り対岸のマリアンネ様の元に婚約破棄書を持っていきサインをもらう…。
そして書いてもらったら破り捨てもう一度婚姻を結び直してください。きっとマリアンネ様は驚かれるでしょうが、大丈夫ですよ」
とシモン様に言われて僕はうなづいた。
「頑張ります!!」
例え嫌われて本当に婚約破棄されてもどうせ振られるなら最期に僕の想いを打ち明けるんだ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます