第5話 ジークフリートの悩み(ジーク)
困ったなぁ。
僕は転生者だ。物心ついた頃に自分が日本で死んで目が覚めたらこの中世的な世界に生まれ変わっていた。中々日本での暮らしと違い不便で慣れなかったし大人の記憶があるからか子供のフリをするのは疲れきっていた。
黒髪はともかく青い目で外人顔にも慣れない。日本人だから外人のイケメンとか美少年とかの基準がいまいち分かりにくい。
初めて紹介された公爵家の一人娘のマリアンネ様が婚約者になった。
とてつもない美少女でこんな美少女となんて無理だよーと前世からチキンな僕は恐れ慄いた。
金持ちの暮らしにも中々慣れなくて使用人にも遠慮しがちで6人兄弟で可愛がられるし何となく気恥ずかしい。前世僕は一人っ子だったし家には両親共働きで一人の時間が長かった。
でも僕は一人でも立派なマリアンネ様が凄いと思った。前世の僕は一人が寂しくてたまらない弱虫だったから虐められたし人が怖かった所もある。
そんな所が今世でも現れているのか。
そんな時に学園に通う事になり護衛騎士のグレゴールと友人になった。
彼は筋肉マッチョだけど頼りになりそして…マリアンネ様に恋していることを僕に打ち明けた。
「前々から…気が強くて素敵な女性だと思っていた!皆は悪魔令嬢と呼び近寄らないが俺…そんな風には見えないんだよな…ああ…羨ましいよ…ジーク」
とグレゴールが言い僕は思わず
「そ、そうなんだ!な、なら僕協力するよ!!必ず彼女と婚約破棄してみせるよ!!グレゴールとうまく行く様願ってるよ!」
と言ってしまった。
グレゴールは嬉しそうに
「本当か!?流石友達だ!ありがとう!!ジーク!期待してるよ!!」
とグレゴールを応援しようと頑張って僕はマリアンネ様に婚約破棄の話をしたのだが…条件を突きつけられた。
まぁ、公爵家との婚約が破談になるなんてそう簡単じゃないよね、グレゴールの為にもなんとしても婚約破棄しなくちゃ!
前世友達がいなかったのでやっとできた友達を失いたくはない。そういう思いからだったのに…まさか第一の条件がデートしてあの悪魔令嬢マリアンネ様をキュンさせるなんて僕にできるかどうか…。
それにグレゴールにも悪くて…彼は落ち込み
「気にするなよ…頑張ってこいよ…」
となんとか気丈に振る舞っていた。凄い罪悪感だ!!ごめんグレゴール!直ぐに婚約破棄してあげたい!!
何故かデートの噂は学園に広まり、駆けつけてきた隣国の一年の王女ニーナ様が僕に甘えてくる。僕は彼女が妹みたいに見えてつい甘やかしてしまうんだ。
妹か弟がいればなーって思ってたし。この世界で兄達には可愛がられたけど僕には下がいないからその分可愛がってあげれたらなって兄気分だった所をマリアンネ様に見つかり説教された。
そんなに怒らなくてもー!?
しかも向こうは婚約破棄できるモノならして見ろと言わんばかりだ。ううう。
僕だってやればできる子…だと思うんだけどね。
でも女の人をキュンなんてどうしたらいいのか検討もつかない。このままじゃグレゴールに悪い!何度もデートなんかしたら友情が壊れる!今度のデートだけでクリアしないと!!次にも進めないし!!何で10個も条件があるんだよ!?
でも公爵家令嬢様には逆らえないしなあ!それが貴族社会のルールだしなぁ…あーあ、前世は縛られない楽な生活だったのに今世では地味に金持ちに産まれたせいでこんな目に。
僕が本で調べるかと思い図書室に向かっているといきなり化学室の扉が開きコンスタンティン・フォン・ベッケル先生が手招きした。
先生はマリアンネ様と対立した公爵家の方だ。この二人が仲が悪いのは学園でも有名なのだ。
もし僕がマリアンネ様と結婚したら先生とも仲が悪くなっちゃうのかな?いや、結婚しないけど。
僕にはそんな恐れ多い真似とても無理だ。他に良い人が見つかるよね。あんな美人なら。
「やあ、ジークフリート君!奇遇だね!」
「先生…どうも…」
「まぁ入って?君が困っているんじゃないかと思ってね?」
「え?」
耳元で
「ほら、例の噂を聞いてね!マリアンネ君とデートなんて困ってるんだろ?キュンとさせないと婚約破棄に近づけないとか?
だから先生がいい薬を作ってあげたよ!ようはあの女…いやマリアンネ君をキュンとさせればいい、嫌なデートを何度もしなくていいんだ」
別に僕は嫌だとは一言も言ってないけど…
「ど、どうするんですか?」
と聞いてみると先生は戸棚から怪しい薬を持ち出した。
「それって…」
「惚れ薬だ。これを飲ませればキュンなんて直ぐにするだろう!奴の負けだ!ぐはは!目を離した好きに飲み物にでも入れてやりなさい!!」
「ええ!?でもそれは不正行為では?」
「は?不正をしてはいけないと書いてあったかい?」
それは…
「い、いいえ…」
「ならばいい!俺は君の事がとても心配なんだ!さっさとマリアンネ君と婚約破棄し自由の身になることを誰よりも願っているよ!」
と先生は何故か僕の手をギュッと握った。こんなに心配させて申し訳ない。生徒思いの先生なんだな。
「ありがとうございます先生!僕頑張ります!!」
「その意気だよ!ジークフリート君!」
と応援され僕はルンルンと化学室を出たんだ。ちょっとマリアンネ様には悪いと思うけどグレゴールとの友情の為だ!頑張ろう!グレゴールは一応僕の護衛だし…わからない様に後をついてくるのが可哀想でならない…。
誰だって好きな人が他の人とデートしてるの見るのなんか辛いよね!何とか婚約破棄に向けて頑張らないと!!
と僕はデートに向けて頑張る事にした。
当日ポケットに薬を忍ばせて待ち合わせ場所に向かった。
すると馬車から凄いドレス来た美人が現れた!!ひえええええ!芸能人みたい!!皆マリアンネ様のこと見てるよ!!
マリアンネ様は相変わらず見下した様な目で僕を見て
「ご機嫌よう!ジークフリード様!では行きますわよ!」
と歩き出す!
「わっ!ま、待ってください!!」
と僕は後ろについていく犬みたいになった。その後ろから悲しみのオーラを感じた。ごめんね、グレゴール!!《《》》
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