Ⅶ‐2
アウトレットモールの店を男物で30軒以上、女物で5軒くらい回ってようやく俺達のっていうか楢崎の買い物とウインドーショッピングが終わって、パスタ屋でカルボナーラ食べて喫煙所でタバコ吸ってたら「そういえば忘れてたけど、お前が今いい感じになってる子ってどんな子なん?」みたいな話を楢崎が蒸し返してきたから俺は「何か笑うとふにゃふにゃした顔になる子だよ」とか「見てるとかまってもらいたくなっていろんな作戦を考えたくなる子」とか抽象的な表現で楢崎をけん制したり翻弄したりしてた。
それでだまされる楢崎じゃなくて「芸能人で例えると誰?」とか女性カットモデルがずらりと並んだサイトを開いて「似てるのどれ?」とか色々聞いてきたけど「ここには似てる子いない」って言ってしらばっくれてた。
タバコ吸い終わって「次どこ行く?」って話をしてて、楢崎がタバコを灰皿に捨てた時だった。近くでタバコ吸ってた金髪でツーブロックで色黒で、何か『
俺が言うのもなんだけど、超野蛮人だよね。人のことしょっちゅう疫病神扱いしてくるけどお前も大概やぞ。たぶんだけど、胸倉つかまれてお気に入りの服が伸びたからキレたんだと思う。
輩の仲間が5人いて、楢崎がとっさに空き缶拾って俺が置き忘れのビニール傘を手に持った。楢崎が空き缶の角で輩達の頭をぼてくり回して、フォロー役の俺がビニール傘で殴る。ビニール傘は1回のフルスイングですぐに壊れたものの、派手に壊れた傘は張り巡らされた鉄の部分がむき出しになって、それはそれで威嚇するのに使えた。俺が1人と楢崎が2人。あっという間に3人動けなくしたし、残りの2人は逃げだした。
喧嘩の鉄則として、アウェーで喧嘩して勝った時はすぐにその場から離れることにしてる。そうしないと地元のやつらは地の利を生かしてめっちゃ仲間を呼んでくるし囲まれてボッコボコになるからだ。
ほんで、ちょうどここには用が無くなったことだし逃げんぞっつって場所を変えたんだけど、せっかくこっち方面まで来たんだから津田沼かどっかで映画でも見に寄っていこうよって俺が余計なことを言ったのがまずかった。輩達の地元のつながりと情報網をなめてた証拠。
津田沼の映画館を出た瞬間にさっき喧嘩した輩と怖くて人相の悪いあんちゃんらがいっぱいいて大ピンチ。楢崎に「ごめんね」っつって謝ったら「俺も油断してた」って。
ここで未来は4つに分かれる。1つ目はどんな手を使ってでも逃げる。2つ目は普通に喧嘩して負けてリンチされて恥ずかしい写真撮られてSNSで拡散される。3つ目は通報でお巡りさんを呼んで、お巡りさんのお世話になる。4つ目。めっちゃ気合入れて輩達を全員ぶっ飛ばす。
1つ目は無難だけどアウェーで大人数相手に逃げ切るのは難しい。2つ目は一番最悪で、3つ目は多少ましだけど経歴に傷がついて最低。4つ目が一番理想だけど現実味が無い。
俺と楢崎はまずは逃げてみて、捕まりそうならお巡りさんにお世話になる1つ目と3つ目の
協力し合って生き残るのも手だけど、1人が犠牲になれば、もう1人の逃げきれる確率が上がるのを2人とも嫌ってくらい理解している。共倒れになるくらいなら1人でも逃げられた方がいいし、逃げてから反撃に出てもう一人を助けられる可能性だってできる。
楢崎はパルクールの選手になれるんじゃないかってくらいに見事な身のこなしであっという間に姿を消した。中学からタイマン無敗の男はこういう時にも強い。
置いてかれた俺はこの人数相手にボッコボコにされて裸の写真を自分のInstagramにアップさせられて、死ぬまで金を
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