Ⅱ‐3

 危うくタバコで停学になりそうになった昼休み、教室に戻った後もタンポポ頭のことが気になってたんだけど、そんな時にちょうどイェッタイガーの人が教室に戻ってきて、俺と目が合ってさ、そしたらそのまま俺のとこまで来て「さっき、高杉たかすぎと一緒に弁当食べてタバコ吸った?」って聞いてきた。


「高杉? あのタンポポみたいな頭したやつ?」

「そうそう。秀ちゃんが入学式に喧嘩したやつ」

「ああ、うん。一緒にっていうか… うん… たまたまだけど…」


 俺がそう答えるとイェッタイガーの人は「何がどうなるとそうなるの?」って笑いながら聞いてきた。


「えっ? 見てたの?」

「うん。たまたま2人を見かけたからさ。そしたら仲良く一緒にご飯食べてるし、でもやっぱり喧嘩になりそうになってるし、その後で何故か一緒にタバコ吸ってたから、2人の間で何があったのか気になってしょうがないよね」


 ニヤニヤしながら聞いてくるイェッタイガーの人に、俺はあったことそのままを伝えるとイェッタイガーの人は声を上げて笑った。


「ホントに? 面白過ぎるんだけど」

「いや笑い事じゃないよ、停学になりそうだったんだから」

「そっかそっか。いや、実はさ、俺と高杉は昔からの連れでバイトも一緒にしてるんだよね。あいつ昔から喧嘩だけはめっちゃ強くて一応ここら辺の中学じゃそこそこ有名なやつだったんだよ?」

「やっぱ、そうなんだ? そうだよね、あいつって喧嘩強いよね? 俺もちょっと自信あったから、びっくりした。つうか、あいつ、俺のこと知ってたっぽいんだけど何でだか分かる?」

「秀ちゃんって、有名だよ。俺も入学前から知ってたし」

「そうなんだ? わざわざ俺のこと周りが知らないような高校選んだのにバレてんだ?」

「そりゃ、楢崎ならさきが認めたやつを知らないなら、そいつヤンキーじゃないっしょ」

「楢崎って、こっちでもそんな有名なん? っていうか… えっと…」


 俺はイェッタイガーの人の名前を知らずに困っていると、それを察したのかイェッタイガーの人は親切にも自分から名乗ってくれた。


沢田さわだ。沢田裕翔ゆうとだよ。みんなさわちゃんって呼んでるから、よかったら秀ちゃんもそう呼んで」

「あっ、うん、分かった。それでさ、沢ちゃんって元ヤンだったりしたの?」

「楢崎省吾しょうごと櫻井秀人の名前は、こっちでも知られてるよ。あと俺はヤンキーじゃなかったけど、高杉と仲良かったから知ってただけ」

「ふーん。まあ、俺達の代の地元チャンピオンは楢崎よ?」

「タイマンでもして負けたの?」

「やってない。でも、負けてもいいかなとは思ったかも」

「楢崎も、そう思ったのかもよ」

「いや、いまさら誰が一番喧嘩強いかとか興味ねっす。ふ~ん、でも、それなら高杉だっけ? あいつ喧嘩目的じゃないなら何で俺に話かけてきたのかな? 最初、そのつもりじゃなかったけど気が変わったとか言って喧嘩になったけど」

「気になってたみたいだよ。秀ちゃんと同じ高校だって分かった時も、あいつ結構テンション上がってたし」

「俺も俺がどんなやつか分かんなくて困ってんのに、あいつが俺とちょっと話したくらいで分かるわけねえじゃん。まあ停学に巻き込んじゃったのは悪かったと思うけど、あいつの方が多く殴ったわけだしチャラだよね」

「タバコもらったのは?」

「いや、それはありがとうだけども」

「どうする? 明日、俺と一緒に高杉に会いに行く?」

「え~、でも、あいつ、教師にタバコのこと即行でチクったよ」

「気が合うと思うけど」

「まあね。面白いやつかもしれんとは思ったかな」


 沢ちゃんはどうやら俺と高杉を仲直りさせたいらしい。まあ俺は別にいいんだけどさ、でもなぁ、向こうがちょっとでも調子に乗ってオラオラしてきたら俺も俺でブチギレるよ?

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