Ⅰ‐5
白髪で襟足の無駄に長いタンポポ頭がどんどん近づいてきて、あと少しで俺のパンチの射程距離に到達する。このままそんな目付きや態度で近づいてきたら殴ろうって決めてたんだけど、あと一歩のところでタンポポ頭がピタリと止まった。どうやら見た目だけの雑魚ってわけではなくて、一応バカ校の入学式早々、あからさまに目立つカッコで来るなら来るなりの実力はありそうだ。
ちょっと見直したというか警戒もして、確かになぁ、いきなり殴るのもあれだし、一応「俺に何か用?」って聞いてみたんだけど「お前、
「そうだよ、俺が櫻井秀人だったら何だよ?」っつって、言い終わるタイミングと同時くらいにタンポポ頭の顎先に
ただ実はここだけの話なんだけど、ホントに内緒だよ? 俺って結構喧嘩は強いんだよね。中学の頃もゴリゴリにグレてたら結構いいとこまでいけてたんじゃないかってくらいには強いんだよ。だからこの喧嘩も楽勝。身の程知らずのボウフラが、軽くひねってやんよこのガキって思ってたんだけど、タンポポ頭ってばボクシングやってるっぽくて、こっちのパンチをかわした後で脇とか顔面とか、こっちのガードが甘いとこばっか狙って殴ってきてさ、そのパンチが全部メチャクチャ痛いの。
食らった瞬間「いった~い…」って殴られたとこ押さえてそのまま保健室に行きたくなったもん。ボディブロー食らった時なんか、そのまま寝転がってのたうち回りたかったし。っていうかヤンキーのくせに格闘技習うってズルいよね? 俺も柔道は習ってたけども。単純に強い相手と戦いたいっていうんならさ、プロの道行けプロの。そんなね、弱い者いじめみたいなことばっかりしてるから軽蔑されるんだよ。ホントにもうこのガキャぶっ殺す!
俺は怒りでアドレナリンを放出させて何とか痛みを我慢してたものの、小賢しい感じに距離取られて相手の間合いでこのまま殴り合いを続けてたら負けちゃいそうだった。うっぜぇなと思いながらも俺もキレてるからさ、殴られるの覚悟で殴られながらも強引に胸倉つかんで投げ飛ばした。
倒れてるとこ顔面に膝蹴り入れて寝転ばしたまま馬乗りになりたかったんだけど、タンポポ頭が膝蹴り入れたのに起き上がっちゃってさ、俺が当初予想してたのよりもずっとめんどくさい喧嘩になりそうだった。
ほんで、どうしべぇやと思ってるところに「お前ら、何やってるんだ!」って騒ぎを聞きつけた教師達が来て俺達は取り押さえられて、現在に至るって話。
記念すべき入学初日、俺はめでたく3週間の停学処分を言い渡された。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます