Ⅶ‐3

 輩達20人くらいに狙われて逃げ回ってたんだけど、そんな絶体絶命の大大大ピンチに救いの神が舞い降りた。そういや仏様の螺髪らはつとパンチパーマって似てるもんな。


 状況をよくつかめていないパンチさんに「パンチさん、助けて!」って泣きついた。楢崎に「まだ近くにいるんだろ? この喧嘩勝てるから手伝え!」って叫んだ。


「よく分かんねえけど、とりあえずこいつらぶっ飛ばせばいいのか?」


 俺は激しく首を縦に何度も振る。その間に俺を追いかけてきた輩達が軽率にパンチさんのリーチに入った。


「テメェも仲間かこらぁ!」


 何も知らない輩の1人が勢いづいて叫んだ。パンチさんはそれには答えずに、握り締めた拳を相手に向けて放つ。拳の大きさ、丈夫そうな手首、腕の太さと背筋のいかつさ。想像するだけで嫌になるくらい痛そうな爆弾パンチが爆発した。爆風に巻き込まれた輩が2人、文字通りぶっ飛ぶ。近くで見ていた輩達はこの異常現象を理解しているものの、後から駆け付けてきた輩達はこの脅威を目の当たりにしていないからまだ理解はしていない。理解をしていない輩が軽率にパンチさんに向かっていってまた腕力の暴風雨に巻き込まれる。


 ブルン、ブルルン。右と左1発ずつ繰り出される世にも凶悪なアンハッピーセット。人間がマンガみたいにぶっ飛んでいくその光景は現実味が無くて輩達がマネキンか何かに見えた。


 パンチさんという異世界でなら厄災級の男を理解した輩達全員が恐慌状態に陥った瞬間にまた別の場所から悲鳴があがった。楢崎が輩達の背後に回っていて曲芸みたいな蹴りを食らわし、美しく洗練された最短最速の右ストレートで輩の何人かの顎を打ち抜いていた。


 前方にパンチさん、後方に楢崎って脅威に挟まれて輩達は軽くパニック状態だったんだけど、その中に1人だけ冷静でガタイのいい目付きの嫌なやつがいたんだよ。たぶんだけど、輩達のリーダー格なんだと思う。


 そいつがパンチさんの方へ向かってってさ、不思議だったんだけど、その時は俺も楢崎も、残された輩達も、パンチさんと輩のリーダーのことを見てた。周りが静まり返ってて、リーダー格の男がそのままパンチさんに近づいてって、振り下ろすような右ストレートをパンチさんに食らわせた。


 それ見た瞬間、ぶっちゃけ、俺はパンチさんが死んだんじゃねぇかと思ったし、それくらい強烈な右ストレートだった。ただね、俺はパンチさんがどんな顔してたのか見えない角度から見てたから分からないんだけど、リーダー格の男の表情が急にヤバいって感じで変わったんだよ。ほんで、それと同時くらいにパンチさんがリーダー格の男にアッパー食らわしてさ、リーダー格の男の首がボロンってなってそのまま後ろに倒れた。倒れた時に地面に思いっ切り頭打ってたから、食らった瞬間から、たぶん意識無かったんだわあれ。

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