閑話:異世界金融 サキュバスキャバクラにハマった男③
「いてててて」
頭がズキズキして吐き気がする。
「どこだここは?」
ちゅんちゅんと小鳥の鳴き声がする。太陽の光が眩しい。そうだ昨晩はサキュバスキャバクラの店でこん限り酒を飲んで…………それで酔いつぶれて道端で寝ていたのか……。
ポケットから財布を取り出し、残金を確認する。残金は…………銅貨12枚。
「………………」
ルドルフは呆然とする。たったの一晩で金貨2枚を使い切ってしまった。
「まあいいか」
そう呟いてルドルフは立ち上がる。借金の返済を負うのはマリーだ。自分には何の痛みもない。そんなことより昨晩は楽しかった。あそこまでいいところを見せたんだ。今度こそルチアとやれそうな気がする。
「次は誰を引っ掛けるかなあ」
ルドルフの頭の中にはすでに次の借金の保証人のターゲットのことに切り替わってた。また人柱を見つけて今度こそルチアとやる。ルドルフはフルフラのおぼつかない足取りでとりあえず自宅へと向かった。
「ここがそのルドルフって学生がいる学園か」
「そうっすね」
学園の正門前で張り込む二人の大人。
そんな中、
「ねえ、ルドルフ君、今日一緒に帰らない?」
「ああ、なんで俺がてめえと帰んだよ?」
「えっだって私たち……」
下校中のルドルフを見つけたライラがそれをレオンに伝える。
「ちょっとすいません。君がルドルフ君でよかったかな?」
「ああ、なんだあんた? あっ! あんたはあの時の金貸しの受付員」
「久しぶりっす。返済の期限が切れたから取り立てにきたっすよ」
固まるルドルフとマリー。
「丁度みんな揃ってるみたいだから、どうだろう。あそこの喫茶店でちょっと話をしない?」
喫茶店のテーブル席の一方にはレオンとライラ。それに向かい合う形でルドルフとマリーが席に座っている。
「ルドルフ君、借金返してなかったの?」
「………………」
「ルドルフ君?」
マリーのその問いかけに答えないルドルフ。その様をレオンとライラはさめた目で見つめる。
「……早速なんだけど」
ルドルフとマリーの注目がレオンに集まる。
「ルドルフ君、君に貸したのが金貨2枚。返済から3ヶ月過ぎてるからトイチの利息が加算されて金貨4枚の返済になる。耳揃えて返してもらえるかな?」
「そんな金はねえ」
「何?」
「そんな金はねえって言ったんだよ。金ならマリーが返すからマリーから取り立てろよ」
「ルドルフ……君?」
マリーは再度ルドルフに疑問を投げかける。
「うるせえなあ、さっきから。俺は最初から借金なんて返すつもりはなかったんだよ。平民で俺のいうことを聞いて保証人になりそうだったから、お前に白羽の矢を立てて口説いたんだよ。ほんとに俺がお前をなんかを好きになったとでも思ったのかよ?」
「そんな! ひどいっ!!」
マリーはショックのあまり泣き出す。テーブル席内に嫌な空気が流れる。
「っうことで返済はマリーがするからさ。マリーから取り立ててくれや」
「いや、普通に君に返済してもらうけど?」
こいつ話を聞いてるか? と一瞬ルドルフは固まるがすぐに、
「いや、俺は貴族だぞ? 俺から取り立てるの無理だろうが、平民の商人無勢が?」
レオンとライラは顔を見合わせる。
「やっぱり知らなかったか。俺はレオン商会の主のレオンという。そして俺は貴族で伯爵だ」
ぶーーーっ
ルドルフは口に含んだ飲み物を吹き出す。正面のライラにその毒霧がかかることになった。
「伯爵?」
「そう伯爵」
「マジ?」
「ああマジだ」
ライラはその額に青筋をたてている。余裕で偉そうだったルドルフは急に態度を変える。
「でも伯爵様っていわれても無いものは無いんですけど。親が保証人になってるわけじゃないですから、親から取り立ても法的にはできないですよね」
そういい終わった後にルドルフはニヤリとする。
「俺には強制執行っていうスキルがあってねえ。強制的に返済させることができるの。お金がないんだったら君のステータスの所持金がマイナスになるね。それで今後君関連の入金や支払いがされた時にはすべて、その所持金のマイナスの相殺にあてられることになるよ」
「………………」
理解が追いつかないのかルドルフは固まる。
「それじゃ親にもバレる……」
「当然バレるだろうね。学費の支払いとかしても学校には入金されないだろうから」
ルドルフは椅子をおりてすぐさまレオンとライラに土下座する。
「どうもすみませんでした! こんなことになると思っていなかったんです! お願いします! 勘弁してください!」
魔術学園の学生が土下座をしている。その異様な光景に店内が少しざわつく。
「ルドルフ君。謝るのはいいけど君が謝らなければならない相手は他にもいるんじゃないの?」
「え?」
ルドルフの隣ではマリーは目に涙を溜めながら怒りの視線をルドルフに向けている。
「あ、いや、ご、ごめん…………」
その態度からはまだ貴族の傲慢さが垣間みえた。
「それじゃあ、君の処遇はマリーさんに決めてもらうことにしよう。マリーさん、このルドルフ君の借金。謝ってるし、見逃してあげた方がいいかな?」
「いえ、借りたものはしっかりと返済するべきです!」
「そんな! マリー、お前俺のことが好きって!?」
マリーはキッとした表情でルドルフに怒りの視線を向ける。
「ゔっ……」
「それじゃあルドルフ君には返済してもろう」
「いやぁあああ、ちょっと、待ってくださああああああいいいいっ!!!」
店内が眩い光に包まれる。他の客たちから感嘆の声が上がる。
「うん、きちんと返済されてるな。ルドルフ君、君もステータスを確認してみるといい」
「あぁああああああっ!! こんなのバレたら!! 下手したら勘当されるぅううう!!」
涙目になってルドルフは悲痛な声を上げる。
「それじゃあ、用件は済んだから帰ろうか」
レオンとライラ、マリーは席を立つ。
「なあ、マリー、少しでいいから金を……」
「触らないで! それからあなたが私にしたこと友達や先生に全部いうから!」
「そ、そんな!」
マリーは肩をいからせて店を出ていく。
その様を確認したレオンとライラの二人は、顔を見合わせて少し微笑んだ。
「最初はまだ学生だし貸す気なかったっすけど、やっぱり良からぬこと考えていたっすね」
「まあ、いい社会勉強になったんじゃないかな。親が貴族なら金貨4枚くらいなら楽に支払えるだろうしね。いいお灸になっただろう」
ルドルフはまだ店の中で土下座の姿勢のままで泣き崩れていた。
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閑話休題。
次回からは本編の続きが始まります。
続けてお楽しみください。
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