第18話 経験値割当
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先手必勝。俺はまだ弓師に有利な間合いの段階で出し惜しみせずに必殺のスキルを繰り出していく。スキルで強化された無数の弓矢がほぼ一斉に放たれる。
その刹那。
キキキキキキキィーーーーンッ!!!
その散弾のような弓矢を全てシーザーは叩き落とす。
「今のはちょっとヒヤヒヤしたぞお? ここまでの弓師は初めてだ、やるなあお前! だが、」
ゆらりとシーザーがその一歩を踏み出しと思ったら――
次の瞬間には俺の目の前までシーザーは到達している。
上段薙ぎ払いから右上段からの斬り落とし、下段からの振り上げ。俺はその連続攻撃をすべて紙一重で躱す。
やはり相当強い。しかもシーザーは余力を残しているようにも思われた。一方で俺の今の回避はほぼ全力。余力によっては次の攻撃をかわしきれないかもしれない。
「今ので大体半分、50%くらいの力か? 次は80%でいってみようか」
額を流れる冷や汗。いまので半分くらいの力だと? 先手を取る――
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ドガァッ!!
シーザーは剣の腹でうまく衝撃を逃して俺の一射を防ぐ。そしてシーザーはニヤリと笑みを浮かべた後に。
空高く飛び上がる。
まさか上からとは虚をつかれた俺は一瞬対応に送れる。
「おらぁ! 天空落としだぁ!!」
落下の勢いもかりて、上段から凄まじい勢いで剣が振り下ろされる。
俺は横っ飛びでその攻撃を躱すが。……シーザーが斬り下ろしたその先、数歩分くらいの間に剣撃の跡がくっきりと地面に形成されていた。もし、後ろに飛んでいたら命はなかっただろうと思われた。危ない所だった……。
「ひゃっはーーーっ! 楽しくなってきたなあ!!」
俺の焦燥を見透かすようにシーザーは一気に畳み掛けてくる。
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無数の斬撃が一気に俺に迫りくる。
「ぐっ……」
「今のも躱すかぁ」
一旦俺はシーザーとの間合いを十分にとる。
そこに真夜中のこんな時間に一台の馬車が訪れた。
「おい、シーザー、マンハントは順調か? …………なんだお前らは……こないだの?」
馬車から降りてきたのは領主のフレドリックであった。
「マンハントの入荷はご希望どおりの数をそろえておりますぜ。こいつらは今片付けますのでしばしお待ちを」
「ふん、身の程知らずが首を突っ込んできたのか。シーザー、遠慮はいらん! こいつは細切れにして豚の餌にしてやれ! 女どもはわしの慰めものにしてやるわ!」
フレドリックは下卑た想像をしているのか気持ちの悪い笑みを浮かべている。
「じゃあ、領主様もこられたってんでそろそろお遊びは終わりにするか。次は100%だ。冥土の土産に教えてやる。……俺のレベルは80だ」
シーザーはニヤリと余裕の笑みを浮かべながら告げる。言外にお前のような雑魚、しかも弓師に勝てるわけないだろと告げる。
鑑定していたのでシーザーがそのレベルなのは知っていた。なんとかなるかと一抹の期待をしていたがやはり厳しそうだ。
俺は自身の両手を天に向けて広げる。
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俺から無数の経験値の光の粒が湧き出てそれが俺自身に取り込まれる。体の深部、深い所から恍惚が起こってくる感覚。満月の夜、俺の周囲だけが嘘のような光と輝きを放っている。「綺麗だ……」 と敵であるはずの領兵もその輝きに見惚れていた。
すべての経験値の取り込みが終わり、幻想的な光景も終了した後。
「なんだ今のは? 何かの奇術、または、命乞いのショーか? 悪いがお前が死ぬことはもう決定事項だ」
そう言い終わるか終わらないかの刹那。シーザーは一足で俺との間合いを詰めて首を跳ねようと上段を横に一閃。
「ほら、これで終わり! ………………ってあれ?」
シーザーが跳ねたと思ったのは俺の残像の首だった。
「今の光の粒。経験値割当といって、俺が保持して保留してた2千万もの経験値を自分に割り当てたんだ」
「ッ……?」
俺の言葉に一瞬シーザーは固まるが、
「はっ!? ふかしこいてんじゃねえぞ? 2千万だあ? そんな経験値を割り当てが可能だったらレベルは有に80をこえて……」
「ああ、だから俺の今のレベルは85だ。高レベル帯でのお前と俺とのレベルの開き。これがどれほど絶望的な差であるかは同じ高レベルのお前には分かるよな?」
「え?…………は?…………いや、そんな訳が……」
「弓師がそんなレベルにまで上がれる訳がないって? ここに上がれている人間がいるんだよ!」
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間髪入れずに俺はスキルショットを発動。雨のような矢がシーザーに飛んでいく。
「ぐっ、いってぇーーー!!」
先ほどは余裕ですべて弾かれたが今度は二射が命中する。
「これで俺が嘘をいっていないことが分かったか? あ、ちなみに今のは50%の力だ」
ギリっとシーザーは歯ぎしりをし、先ほどの余裕の表情から一転してその表情を険しくさせる。
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