第34話 ダイヤモンド級
『
ルディのその発動の合図と同時に、はじめは小さな氷の塊だったものが出現した後、その周りを次々と氷が覆っていき大きな氷の塊となる。ルディが得意とする氷系魔法だった。
ルディは
俺は瞬時に火系のマジックアローを射出してそれを迎え撃つ。
マジックアローと
「な!? それがマジックアローとかいうやつか…………生意気な」
ルディは次の魔法発動の為、詠唱にうつっている。長い付き合いだ。俺は奴が何を得意としてどんな強みがあるのかを把握していた。次に打つ手もなんとなく予想できる。
圧倒的に勝つ。その目標の為――
《
俺は経験値の光の粒に包まれそれを吸収する。それによって一種の麻薬でもあるかのような昂揚と多幸感をともなう快感を感じる。
染み渡るような快感を感じ浸った後に訪れたのは、魔力量は増大し肉体強度も確実に向上しているという実感。俺は思わず笑みが溢れる。強くなるというのは一種の快感だ。
今回割り当てた経験値は1億。レベルはついに98の90台に到達した。まるで別人になったかのような感覚。その時、ルディがしていた詠唱は終わったようであった。
「なんだ今のは? 治癒魔法にしては大げさだ、命乞いのための大道芸か? ならばこれで踊れ!」
ルディのユニーク魔法である
俺は空中で飛び回るその
「ひゃああああああっはっはっは!! そうだぁ! 踊れ、踊れぇ!!」
俺が必死に
正直いって
俺はまた火のマジックアローを射出して
「ちぃいいっ! 俺の
なぜルディは自分より俺の方が強いという可能性を考えないのか不思議だ。経験値貸与という能力を持っている俺がレベリングをしていない訳がないのに。例え高レベルになったとしても自身のユニークスキルと、俺の弓師というジョブから絶対に負けることはないと思っているのだろうか?
「そのゴミクズにお前は今からボロボロに負けることになるんだけどな。バッサーノ公爵家の次期後継だっけ? それも解消されることになるから楽しみにしてろ」
俺のその言葉によりルディは最初眉をひそめると、次にはみるみるうちに不快そうに顔を歪める。その様は彼が公爵家の次期後継であることを誇りとし、そこは踏み込まれたくない地雷源であったことがわかる。
「平民無勢が俺様の後継を取り消すだと? とことん舐めやがってこのクソが…………」
怒りにプルプルと震えて下を向きながらもルディは詠唱を行っている。俺には次に奴が打つ手も読めていた。ルディの持つ最強の魔法で前冒険者パーティー、暁の流星をダガール国最強の冒険者パーティーへと押し上げた原動力となった魔法だ。
『
無数の氷剣がルディの周囲の空中に出現する。必殺の氷剣魔法。俺が知る限り、ルディがこの魔法を発動して敵を仕留められなかったことはない。
「さあ踊れ、死のダンスを」
すぐに殺せたとしても少しずつ切り刻みなぶるように殺すのがルディのやり方だった。
氷剣が一斉に俺に迫りくる。ギャラリーたちには目にも止まらぬスピードだ。というかよけている俺も残像のようにみえてはっきりと目で追えていないだろう。だけど俺からしたら止まってみえる
俺がかわすスピードが早すぎて周りには若干の土煙が生じる。
「あのさルディ、お前、俺のレベルとか気にならないの? 俺が経験値貸与って能力持ってるの知ってるだろ?」
俺は
「んな、お前なぜかわせる…………ゴミクズの弓師がどんなレベルであっても気にも止めねえよ!」
「そうか。ちなみに俺のレベルは98ね」
ルディはその目を見開く。
「98だって? そんなもん世界で一つのダイヤモンド級のパーティーしかいないんじゃないのか?」
「冗談だろ、そんな化け物」
「一体何やったらそこまでレベル上げられるんだよ」
彼が連れていた領兵たちはざわつく。
「はったりだ。ちょこまかと逃げ回るスピードは向上したみたいだけど、ゴミクズの弓師のこいつがそんなにレベリングできるわけがねえ!」
だから俺の経験値貸与の考慮はどこにいったんだ? まあいい。はったりかどうかは――――
ドドドドドドドドドドーーーーン
俺はマジックアローを瞬間的に連続で射出して氷剣を一気に撃ち落とす。土煙と水蒸気爆発の煙幕の後に無傷の俺の姿がルディたちの目に入る。
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