第41話 最期の光
「うぉおおおおおおおおおッ!!!」
俺は抑えていた魔力を解放する。そして更にスピードを高めたマジックアローを連射した。
俺が発射したマジックアローはすべてメイドたちに命中する。その一撃でほとんどのメイドたちは昏倒して地面へと降り落ちる。威力を強めることでの懸念だった殺傷性は昏倒させるだけでなんとか大丈夫だったようだ。
残った残党も俺のマジックアローで大きなダメージを負っており動きに精彩を欠いている。そこをライラが正確に追撃を加えていき、最後に残ったメイドも戦闘不能へと陥らせる。
「残るはもうお前だけっす。観念するっす!」
ライラはドマーゾに剣を向けてそう宣告する。
「ぐぬぬぬぬぬ…………私の……私の……大切な使徒たちを……よくもよくもよくもぉおおおお!!!! 貴様ら楽に死ねると思うなよ!!」
ドマーゾは顔を真っ赤に染めて烈火の如く怒りを発散する。
「ソフィ、我が最高傑作よ! お前の妹たちを傷つけた不敬者たちを殲滅するのだ! リミット制限は最初から120%の解除だぁあ!!」
リミット制限の解除。先ほどのメイドたちはレベル70程度だったが明らかにレベル70の動きと魔力ではなかった。70の120%はレベル84程度。まさか100を超える%分の能力が向上しているのか? ソフィにも経験値譲渡をしている為、彼女のレベルは有に80をすでに超えている。だとしたら非常にまずい!
「不敬者たちを……殲滅するのです……」
ソフィから眩い閃光が俺たちに放たれる。光魔法だ。俺はギリギリ躱せたがニートとライラはその一撃で戦闘不能に陥っている。
《
眩い光の粒が俺に降り注がれる。出し惜しみをしている場合ではない。俺は10億の経験値を割り当て遂にレベルは110に到達する。
「なんだその光の粒は回復魔法か? ソフィ残りの不敬者は後一人だ。遠慮はいらない、存分に殲滅しろ!」
「きゅぅううう! きゅう、きゅう、きゅうぅううう!!」
そこにキュイが現れ、ソフィの目の前にいって必死に語りかけるように鳴き声を上げる。
「なんだお前が可愛がっていたペットの耳うさぎか。まだいたのかこいつ。ソフィ、邪魔するようならそいつも殲滅しろ!」
「ゔゔゔっ…………」
ソフィは苦しそうに頭を抱える。
「どうした言うことが聞けんのか!? これは主の指令だ、耳うさぎを殲滅しろ!」
「ゔゔゔっ…………わぁああああああああッ!!!」
ソフィが苦しみの叫び声を上げた後、その瞳が点灯する。するとまた先ほどの無表情へと戻り、ソフィはキュイへ向かって閃光を放った。
「ぎゅぅゔゔゔっ!!!」
「止めろ! ソフィ!!」
俺の掛け声にもソフィの表情は変わらない。だが、ソフィの瞳からは大粒の涙が流れ落ちていた。
「なんだ、ソフィお前涙を流して……まさか、キュイのことを愛していたのか? 私は言い聞かせていただろう、愛などその先には不幸しかないと。愛などというものは詭弁でしかないと。不幸の入り口であるとはなぁ! お前がキュイを愛さなければお前のその苦しみは生じなかったのだ。愛とは地獄の入り口なのだ!」
「違う! そんなことはない!」
「黙れ! お前に何がわかる! 私は人並み以上に愛してきた! 愛の形など人それぞれ千差万別だ! だが私の愛の形は理解されることがなかった。愛する存在を未来永劫、私の手元に必ず置かれるようにして何がダメなのだ!? 愛する対象に呪詛の言葉を吐かれたことも一度や二度ではない! 愛の先など闇しかない!」
「ソフィ、俺は君のことが好きだ」
「ソフィ! そいつを殲滅しろ!! 殺せぇ!!!」
「ゔゔゔゔゔゔーーーーっ!!!」
ソフィは必死に抵抗の様子をみせる。だが命令には逆らえないのか、その瞳が点灯した後に俺に向かって閃光が放たれる。その閃光は俺に直撃した。ソフィは大粒の涙を流し続けている。
「君に好きかもといわれた時、嬉しかった」
「ゔゔぅわぁああああああーーーーっ!!!」
ソフィが放つ閃光がまた俺に直撃する。
「俺のことを思った時に温かい気持ちになってぽかぽかするといわれた時…………ほんとは叫び声を上げたいくらいに嬉しかったんだ」
「………………」
ソフィが下を俯き無言となる。
「どうしたソフィ! 殲滅するのだ! レオンを殺せ、これは命令だぞ!!」
下を俯くソフィの瞳に光が一時灯るが俺に攻撃をする様子はない。
「ソフィは…………すべてを思い出したのです…………」
顔を上げたソフィの表情からは強い決意が伺えた。
「ソフィはそこのドマーゾに作り変えられてからはまるで意思を持たない人形のようでした。感情の制御をされていたので辛さを感じていた訳ではありませんが、無機質に時が流れる死人のような人生を送っていたのです。」
「ソフィ、お前も……お前も……結局は私を裏切るのか…………」
ドマーゾはわなわなと震えている。
「ある日、なんのはずみかドマーゾの制御から逃れられた私はキュイと必死に研究所から逃げたのです。ですが、その時に脳に負荷がかかったのか私は記憶を亡くしてしまったのです。途方にくれてキュイとともに街をさまよっていた時にレオンと出会ったのです」
「ぎゅぅゔゔゔ…………」
すでに虫の息に近いキュイが必死に鳴き声を上げる。
「レオンと出会えてからは本当に幸せな日々を送ることができたのです。レオンとニーナとライラには感謝しても感謝しきれないのです。みんなと過ごした日々はソフィの宝物なのです。そしてその仲間もソフィのかけがえのない宝物なのです。だからこそソフィは決意することができたのです」
決意? 一体なんの決意だ?
「ライラにニーナ、攻撃してしまってごめんなさいなのです。キュイ、攻撃してしまってごめんなさいなのです。キュイがいてくれたことで私はどれだけ救われたか計り知れないのです。これからはニーナとライラ、そしてレオンに可愛がってもらうのです」
まるで別れの言葉のような…………一体何をソフィはいってるんだ?
「そしてレオン、今ならはっきりと私はこの言葉を言えるのです。…………私はレオンのことが好きなのです」
「………………」
ドマーゾが焦った様子で、
「私の命令を聞かないということは…………やはり自爆機構を発動させたのかソフィ!! 止めろ、止めるんだぁあああああ!!!!」
自爆機構だと? ドマーゾのその言葉を聞いた瞬間に俺はソフィに駆け寄る。しかし、ソフィは最後に――――
「ああ、もう一度、みんなとピクニックに行きたかったのです…………」
その言葉を最後にソフィは彼女自身が眩い閃光に包まれて――――
その光が消え去った後にはソフィは跡形もなく消え去ってしまっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます