第9話 いじめという術

「少し落ち着けたか? 」コリコは今度は少し不安そうな声で言った。

「あ・・・ありがとう・・・もしかして・・・僕のこと・・・・・」

「知っているよ、今日、朝からずっと見てきた。全く・・・あの連中を屋上に縛り付けてやろうかと思ったけど・・・とにかくお前と話す方が先だろうと思って。まあとにかく椅子の下見てくれ」

「僕の靴!!! ああ!!! ありがとう!!! コレで家に帰れる」

うれしそうな顔の僕とは反対に、コリコは可愛い顔をもっと悲しげにした。


「こうすることがいいかどうか俺もわからない・・・両親に知っておいてもらった方がいいなじゃないかと思うんだ、悪質だろう? 」

「う・・・・ん・・・・・」

「心配かけたくないって気持ちは痛いほどわかる、でも、今のお前じゃどうしようもないぞ」

妖怪からもそう言われて、正直何も言えなかった。

「お前、今自分がどうなっているかわかるか? 」

「どうなっている・・・いじめられている・・・・・標的にされている」

「そうだな、じゃあお前、今まで、みんなに迷惑をかけるような、何か悪いことをしたか? 」

「それは・・・・・してないと思う」

「じゃあお前をいじめている奴らが、そんなにすごく良い生徒か? みんなから好かれているか? 」

「そうじゃないと思う・・・・・」

「じゃあ何で、お前はそんな顔をしているんだ? 悪くない人間が悪い奴らに意地悪をされているだけじゃないか。気にせず、自分の好きなことをすればいいじゃないか。どうして大好きな動物のことも調べなくなって、親にウソの姿を見せて安心させて、逆に自分の心をボロボロにしているんだ? 」

「どうして・・・・・」

「忘れようとしなかったのか? 」


「したよ!!!! 」

僕は大きな声を出した。


「忘れようとしたよ!! 図書室で動物のことを調べて、学名とかまで無理矢理覚えようとした!! そうすれば嫌なことも忘れられるだろうと思って!! このことを考えないようにしようと誓うんだ! 僕の動物に対する愛情は、いじめに負けるような弱いものじゃないはずだって自分に言い聞かせたんだ!! でも、でも・・・・・そんなときにすっごく嫌な意地悪をしてきて、他のクラスメートまでクスクス笑うんだ!! 女子も僕に上から物を言うんだ! 同じ年で偉くもないのに! 日に日に悪い方のグループが増えてきて・・・僕・・・」


ポタポタと涙が流れた。泣かないようにしていた、泣いたら負けだと思っていたから。

それをコリコはなぐさめてくれるかと思ったら、さっきよりも冷静にこう言った。


「それは術だ。お前はいじめという術にかかっているんだ」



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