第14話 技とわざと

「あのグループは今みんなで「一匹オオカミ」をなぐさめているんだよ」

「今日見たらさ、別の人間かと思うほど小さくなっていたよ」

「ハハハハ」「フフフフフ」僕の周りから笑い声が生まれてきた。


 人の不幸を笑うことは、確かに絶対にやってはいけないと思う。でも

「キャハハハハハ!!! 」

「もう、いっちゃん、このこと、ツボにはまっているんだから!! 」

おとなしめの、笑い声を聞いたことのない女の子がそうなると、クラス中が穏やかな感じになった。


そうだ、誰かが絶えずいじめられているクラスなんて、面白くはない。そして今僕の周りにいるクラスメートは、罪悪感をずっとくすぶらせたように持っていてくれたのだ。


「本当にごめん、真日、一人で掃除させたりして。今日からは一緒にやるよ。もう、あいつらの言うことは聞かない。考えてみればどうして聞く必要があったんだろう」

「そうよね、すっごく上からものを言うけど、別に彼女たちが偉いわけじゃ無いもの。どうして従っていたのかしら」

女の子たちも言ってくれた。そうして始業ベルが鳴り、例の一団が入ってきたら、僕は「見ることの無いもの」を見た。


それは一匹オオカミの目の周りの赤み。


ちょっと可愛そうな気もした。


 授業が始まると、僕は久々顔を上げて先生の話を聞けた。勉強に集中というか、頭が正常に回り始めた感じが、本当にうれしかった。

でもその回り始めた頭で、

僕はあまりにも重大な、極秘の、きっと中学を卒業して、十年以上はだまっていなければいけないことを「発見」した。


「彼女・・・わざとだ・・・わざとちょっと仲良くして、告白してきたら「受け入れる」みたいな雰囲気まで作って・・・その上で、断る以上のことを言ったんだ。

そうだ・・・そういえば、僕が遠目に見ているのをちらっと、まるで確認するように見ていた・・・・・」


うれしいけど、かなり怖くもあった。


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