第14話 技とわざと
「あのグループは今みんなで「一匹オオカミ」をなぐさめているんだよ」
「今日見たらさ、別の人間かと思うほど小さくなっていたよ」
「ハハハハ」「フフフフフ」僕の周りから笑い声が生まれてきた。
人の不幸を笑うことは、確かに絶対にやってはいけないと思う。でも
「キャハハハハハ!!! 」
「もう、いっちゃん、このこと、ツボにはまっているんだから!! 」
おとなしめの、笑い声を聞いたことのない女の子がそうなると、クラス中が穏やかな感じになった。
そうだ、誰かが絶えずいじめられているクラスなんて、面白くはない。そして今僕の周りにいるクラスメートは、罪悪感をずっとくすぶらせたように持っていてくれたのだ。
「本当にごめん、真日、一人で掃除させたりして。今日からは一緒にやるよ。もう、あいつらの言うことは聞かない。考えてみればどうして聞く必要があったんだろう」
「そうよね、すっごく上からものを言うけど、別に彼女たちが偉いわけじゃ無いもの。どうして従っていたのかしら」
女の子たちも言ってくれた。そうして始業ベルが鳴り、例の一団が入ってきたら、僕は「見ることの無いもの」を見た。
それは一匹オオカミの目の周りの赤み。
ちょっと可愛そうな気もした。
授業が始まると、僕は久々顔を上げて先生の話を聞けた。勉強に集中というか、頭が正常に回り始めた感じが、本当にうれしかった。
でもその回り始めた頭で、
僕はあまりにも重大な、極秘の、きっと中学を卒業して、十年以上はだまっていなければいけないことを「発見」した。
「彼女・・・わざとだ・・・わざとちょっと仲良くして、告白してきたら「受け入れる」みたいな雰囲気まで作って・・・その上で、断る以上のことを言ったんだ。
そうだ・・・そういえば、僕が遠目に見ているのをちらっと、まるで確認するように見ていた・・・・・」
うれしいけど、かなり怖くもあった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます