第15話 教会
この町には、小さな古い教会がある。人が座って艶々にした古い椅子と、ちょっと端の方で剥がれ、キシキシ鳴る木の床。文化財になるか取り壊すかで揺れている。
僕もキリスト教徒ではないけれど、時々ここを訪れていた。特にここ最近は「神頼み」というか、心を平静にしたいというか、人から逃れたいというか、椅子に座ってぼーっとしていることもあった。
「前みたいに、動物番組の解説をまた真日にしてもらいたいよ。
本当にごめんな」
「いいよ、もう大丈夫だから」
「知ってるか? 女子は掃除するとき激しくもめたみたいだよ。
「何であなたたちの言うことを聞かなきゃならないの? あなた女王様なの? 私たちはあなたのメイドじゃないのよ! 」って言ったらしい」
「わあ、女子のがすごい」「本当」
男だけなので、自由に話せた。久しぶりの集団下校を、僕は満喫していた。
「一匹オオカミは、今日は一言も何も言わなかったな」
「でも今度復活してきても、退治する呪文があるから」
「必殺、風見鶏!! 」
「ハハハハハ!!! 」
僕ももちろん、みんな解き放たれた様に明るかった。
一人また一人とさよならを言いながら別れ、僕は家が一番遠いので、一人になった。すると、女子生徒の後ろ姿が目に入り、道を曲がって消えた。その先には例の教会がある。
「あ! 今のは、きっと彼女だ! 」
後ろ姿だけでもわかる。バランスがとれ、スタイルもとてもいい。しかも歩き方も気をつけているのか、廊下歩いていても本当に
「絵になる」人だった。でもさっきの後ろ姿は、そんなことを逆に気にしていないような、急いだ感じだった。
「教会・・・・何をしに行くんだろう・・・・・」
つけ回すのはもちろんいけない事だけれど、僕も同じ道を行くことにした。でも彼女の姿は見えなかった。ただ先の方から、走っている靴音がかすかに聞こえた。
「教会に走って行っているのか? どうしたんだろう? 」
僕の心にものすごく不安が走り、きっと彼女と同じように駆けだした。
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