第6話 疑問 疑問

「気持ちいい・・・きれいだよ・・・本当に・・・・・」

動物のことは誉めながら、心の中では今までの僕の知識が総動員され、ひしめき合って、色々な声をあげていた。


しかし一番大きな声は


「これだけの大きさの動物でこの毛並みはないはず」


というものだった。今触っているのは永遠にそうしていたいような、細くてなめらかな毛、猫や犬の毛ではない。でもこの長さは何なのだろう。最高級毛皮、ミンクにしてもモグラにしても、それほど毛は長くない。

「ちょっといいかな・・・」

僕は猫や子犬を持ち上げるように脇の下に手をやって、顔と顔を合わせた。


「可愛い・・・目が大きいね。黒いのにとっても澄んだ瞳だ」

そう、顔の中の目の大きさは猫のようだ。でも鼻がほんのちょっとだけ飛び出ている。でもそれは犬ほどではない。

「この動物はなに? 犬でもないし、猫でもない、イタチの仲間? 」

イタチもとても可愛いけれど、イタチのように体が長細くはない。でも体のしなやかさはそれに近い。


つまりこの動物はとても毛の長い猫の姿で、でも毛の色はダックスフンドのような深い茶色。鼻はトイプードルくらいに突き出しているけれど、犬の様に常に呼吸時に口を開けたりすることもない。


「見たこともない・・・動物・・・ペットショップは近くにあるけれど、でも・・・こんなに可愛ければ、きっと話題になるはずだし」

そして今になって気が付いたが、首輪も何もない。

「君は誰なの? 」

答えるはずなどは無いとわかっていたけれど、言葉はそれしか出なかった。


でも

「名前は考えてなかったな」


目の前の口が小さく動いた。



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