第5話 世界一可愛い動物
「お母さん、まだ家か。いつも何か買い忘れるからと思ったけれど」
僕は小高い丘の公園に来ていた。そこの新しめのプラスチックの椅子に座り、家の方をながめた。ここからだと良く見えるし、夕方はここまで登ってくる人もほとんどいないので、好都合だった。
何となく教科書とノートを広げてみたけれど、なかなか勉強も進まなかった。成績も落ちてきている様に思う。すべてを彼らのせいにすることはしたくはないけれど、集中できないのは確かだった。
「お腹もすいたな・・・どうしよう・・・」
ここまで登ってきたことで、ふらふらしてきた。
「ここ・・・高いよな・・・反対側の斜面は確かコンクリートで・・・落ちたらきっと助からないよな」
実はこう言ったらしいと、後からコリコから聞いた。
すると「ミャア」と声がした
「ああ・・・あれ? 君はどこから来たの? 」
すぐ近くの地面に、真っ茶色の、長い毛の動物が立っていた。
「わあ・・・・可愛い!!! 」
大きさは猫くらいで、夕方の柔らかな日差しなのに、その毛が艶々と輝いている。犬の様な猫のような、逆光気味で良く見えなかったかれど、大きな黒い目がとても美しかった。
「おいで、おいで、来るかな」
その子はすぐにこちらにやって来て、「ぴょん」と可愛い音がするように、僕の膝の上に乗った。
「ああ! ありがとう!! 来てくれたんだね」
でも僕はすぐになでることはしなかった。
その動物は僕の膝でちょっと体勢を整えるようなことをしたので、それがしばらくここにいるというサインのように思えた。
「ありがとう、本当に。うれしいよ」僕はやっとなで始めた。
「ああ・・・・・すごいな・・・・すごく上等な毛だな。まるでモグラみたい、なでてるだけでいい気持ち」
僕は実はとても動物が好きだった。小さい頃は休みの度に動物園に行った。図鑑も、小さな毛皮とかもたくさん持っていて、色々ネットでも調べたりしていたけれど、最近はそれもしなくなっていた。親と動物の番組を見るときも、どこか「装っている自分」がいた。
「ああ・・・すごく飼い主が丁寧にブラッシングを・・・・・・・・んんん???・・・」
動物好き故に、なでればなでるほど僕はこの動物の不思議さに気がつき始めた。
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