第7話 本当の術
僕はあまりのことにこの動物と見つめ合ったまま、きっとぽかんと口を開けていたのだろうと思う。
すると「フフフ」と笑い声がして、一度僕の手からすり抜け地面に降り、また改めて、僕の膝の上に、子犬のように、子猫のようにお座りのポーズをした。
「そんなにこの動物が可愛い? 」
聞こえたのは、若い男の人の声だった。
「え・・・ええ・・・とっても可愛いですよ・・・・・だって、自分のことでしょう? 」
まるで人間に対する受け答えをしたのが、自分でも可笑しかった。
「そうか、大成功かな、でもよくコレが普通の動物じゃないってわかったな。動物が好きなんだな」
「え・・・ええ・・・で・・・あなたは・・・・」
「まあ、コレは俺が変化の術で作り出した動物。最高級の毛並みで、可愛くて、俊敏なんだ」
「変化の術??? 」
「俺は本当の名前もあるけど、妖怪仲間たちからはコリコって呼ばれている。狐や狸を「こり」って言うだろう? この子供という意味らしい。昔はコリ坊やなんて言われていたけど、今はまあ・・・大人になったのに・・・・そのままコリコなんだ」
「妖怪? 妖怪なの? じゃあ本当の姿は? 」
「全く別、でも人間に本当の姿はさらさない、特に俺たち変化妖怪は。
わかるか? 」
「気持ち的にはわかるよ・・・・」
何だか会話がスムーズで、楽しかった。考えると、他人と楽しく話したのも久しぶりだった。
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