第8話 術と現実

「物わかりがいい、お前はかしこいな」

「それほど成績は良くないけど、でも動物のことは本当に好きなんだ。すごいね、ほんとうに可愛い」

「喜んでくれたかな」

「え? もちろん・・・・・でも僕を喜ばせるために? 」

「まあ、それだけじゃないさ、ずっと研究していたんだ。世界一美しく可愛い動物が作れないかなって。色々試作して、やっと形になった! とにかく、良かった。どうなることかと思ったよ。まあ、とにかくコレを食べるといい。腹が減っては・・・だから」

 その言葉の後のこの動物、コリコの行動で、僕は彼が本当に妖怪であると思った。

それはこの椅子の僕が座っているのと反対方向、何もないところに向かって、ぴょんと飛び跳ねると、急にお菓子の箱の山が出てきた。

それもテレビで見たことのある、地方の銘菓と言われている物だった。

「コレはもちろん本物。でも全部食べると、夕食が食べられなくなるだろうから」そんなことも心配してくれた。


多少の、いや、かなりの疑問はあったけれど、僕は空腹に耐えきれず、お菓子の包装紙を「ありがとう、本当にお腹ペコペコで」といいながら開け始めた。


「美味しい! ありがとう」

その言葉を僕は何度も言いながら、コリコに食べるかと尋ねたけれど、「食べるのを見る方が楽しそうだと」とずっとニコニコとしていた。

食べながら、僕は


「そういえばさっき本が何かにぶつかったと思ったらコレだったんだね」

「そう言うこと、術で見えなくしていただけで、実体を消すことは絶対に出来ないから」

「出来ないんだ・・・」

「当たり前だろう? 科学で習うだろう? 」

「妖怪が・・・科学なの? 」

「あのな、物理法則は無視できないんだぞ、無いものはないし、ある物はある。ある物が変化しているだけだ。俺たちはその変化をさせる力がある、椅子の映像を見せていたんだ。でもそれも訓練するんだぞ、まあ・・・生まれ持ってかなり出来るヤツもいるけれど」


「もしかしたら・・・君がそうなの? 」


「まあ・・・な。だからコリコって言われているんだ」

自慢が入っていたけれど、でもそうで無いものもたくさん混じっていることに、僕は気が付いた。


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