第20話 彼女の夢

 僕があまりにも長い間だまっているので、彼女も変だと思ったのか

「私・・・・あ! 大事なことを言い忘れちゃった! 「宝塚の男の人」って言うつもりだったのに! もしかしたら真日君「私が性転換を望んでるって思った? 」


「ほんの少し」


「やだ!! 恥ずかしい!! 間違っちゃった!! 」


 二人でそのあと大笑いした。教会でこんなに笑うなんてと思ったけれど、きっと神様も微笑んでくれたと思う。


「そうか、宝塚の男役、ぴったりって感じがするよ」


「そう? じゃあ女役は駄目だって事なの? フフフ」


僕らは本当に仲良くなれた。しばらくこんな風に話せないのは残念だけれど、でも、それは二人で我慢しようと話し合った。


「簡単じゃないことはわかっているの、宝塚音楽学校に入るのですら難しい、更にその上を目指すから。イバラの、本当にバラの棘がたくさんある道とわかっているけれど、私、やってみる。理想の男性像を目指して」

「がんばって、応援するよ」

「ありがとう、真日君」


そうして僕らは別れた。一人は正面から、一人は裏口から出て行った。


すると、近所の家の大きな木に茶色い動物が見えた。


「コリコ、ありがとう」小さな声で言うと

「真日・・・それより食べ物持ってないか? 」

「家にはあるよ。今日は二人とも仕事で遅くなるって言っていたから、食事も用意してくれているはずだから」

「ラッキーだな!! 」


ちょっと回りを確認しながら、僕らは家に入った。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る