第27話 日本の観光地
「さてと、そろそろ高速をおりるんだろう? 真日」
「そう、降り口から観光で有名な町がすぐだよね」
「今日の目的地だ! 」
「え? 人助けの旅じゃなかったの? 」
「今日は純粋観光。最近はおまえが人助けをしてるだろう? この前いじめられている小学生の親のところに行って話したり、同じ中学生の子の悩みを聞いて「それは行政に相談した方がいい」とかお前、本当に偉いよな。俺の出る幕がない」
「それは違うよね、一人でも行っているから、コリコは」
「まあ、それは個人情報と言うことで。さあ、ちょっと町から歩くぐらいの所に止めようか、そこで人間に変化」
「オッケー! 」
そして高速を降り、車を止め、コリコは変化を解いた。解くと彼らはしばらく人魂のようになって、空中に留まっている。コレが昔の人に見られているのだろうと思う。ほんの数分そうして、それからは急に、人が現れるのも、いつものことだ。
「いつもその人だね、何となく僕に似ていて、まるで親戚のお兄さんみたい」
「そう言うこと、女の子じゃ、おまえが後々面倒だろう? それにその子が可愛くても油女達から色々言われそうだから」
油女、彼女たちこそ、今この国で一番有名な妖怪たちだ。もちろん人間は妖怪とは知らない。
ガソリンスタンド「油女ステーション」は全国に数十店舗を展開するチェーン店だが、「もっと店舗数を増やして」「都市部にオープンして! 」と要望は多いが、それに答えない、答えられない、何故ならそこで働くのは全員「妖怪」だからだ。
元々は行灯の油をただ舐めるだけの善良な妖怪が、生活の変化で出来なくなった事に由来する。それをどうにかしようと、妖怪が事業を興して設立した。そして
「油の質がいい」と評判になり、全国展開をするようになった。それにもっとすごいおまけのような特典付き、そう、そこで働く妖怪たちは、すべて美男美女に変化している。客が来ない訳がない。
「お客さんがたくさん来ていただいてるおかげで、我々としても、質の良いサービスが出来るんです」と妖怪社長は言っている。でも優良企業でなければ、神仏からの何かがある事は僕もわかってきた。
そして妖怪のコリコは車になった時ここで「無料で」ガソリンを入れる。
そのため、旅をすると、お土産を持って行っている。その資金は僕からの時もあるし、何故かコリコが持っている時もある。だから僕も油女さんと知り合いになり、道で会って立ち話をしていた姿を目撃され、学校中の話題になったことがある。今宝塚音楽学校の生徒になった彼女でさえ、禁を破り僕に言った。
「真日君、油目ステーションの人と知り合いなんだってね! 彼女たちどうしてデビューとかしないのかしら? それにね・・・この前私もお母さんとガソリンを入れたとき、不思議なのよね・・・ものすごくきれいな人から「うらやましい」って言われたの・・・・・」
村井さんも彼女も勘が良さそうなので、僕は愛想笑いだけにしておいた。
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