第10話 妖怪のしないこと
「いじめという術? じゃあ妖怪の仕業なの? 」
「まさか!! お前のような動物好きで、親思いで優しい子をいじめるわけなんて、妖怪がするわけないだろう? そんなことすればどうなるか・・・・・昔話で妖怪の話はあるが、そんなものがあるか? 」
「そういえば、ないよね」
「俺たち妖怪は色々な奴らがいる。のんびりと過ごしている者、術をもっと極めようとしている者、人間にイタズラする者もいるが、
心をひどく傷つけるようなことはしないぞ。そんなことを好き好んでやるのは人間と、狭いところに無理矢理押し込められた生き物ぐらいだ。まあ、お前たちの学校という所も狭いところに長時間閉じ込めているからそれと変わらないだろうな」
「妖怪のせいじゃなければ、じゃあ・・・」
「どうしてだと思う? 」
「まあ・・・いじめている方のストレス発散なのかな・・・」
「まあ、それも正解だろうな。お前は誰かを「いじめたい」と思ったことはあるか? 」
「無いけど・・・そりゃやっているみんなを・・・」
「まあ、それは不思議でも何でも無いな。とにかくお前は術にかかっているんだよ。お前の欠点、それはその術に「かかりやすい」だけのことだ」
「かかりやすいって? 」
「奴らは、おまえが憎いわけじゃない。悪い遊びの対象にしているだけだ。誰でも良かった。その遊びでやっていることを、お前は真剣に受け止めてしまった。どこかに自分の非があるんじゃ無いかと思って。でもそれが奴らの狙いさ、そんなお前の気持ちも利用する、そしてお前のちょっとしたミスなんかを針小棒大に話す、悪口を言う。
なあ、いじめることに努力っているか? 悪口をヒソヒソ言うことに何かの特別な訓練がいるか? 」
「いらない」
「そう言うことだ。人を笑わせたり、楽しませたりすることは努力がいる。知識を増やすこともそうだ。
だがいじめること、嫌みなことをするのにはそんなことは全く必要が無い。練習も本番もない、思いついたことをすぐ口に出すだけだ。人が嫌がることをお前だけにやって、他の人にはそれをやらないことで、あたかもいじめられているおまえが悪いと言う気持ちを起こさせる。いじめられていない人間はそれで安心する。一石二鳥だ。
お前は、基本的に悪いことも何もしない、エグい仕返しもすることもないだろうから、安心していじめられるってことなんだ。
その嗅覚だけは天才的だ。そしてやればやるほど、おまえが目立って悲しい顔をする、結果が毎日、目に見える。それが面白くて楽しくって仕方が無いんだ。」
「でも! 辛気くさい顔を見たくはないって言うんだ! 」
「でもそれはお前もわかっているだろう? そうさせているのは自分たちだ。
つまり支離滅裂ってヤツだ。そこには一貫した理論も何もない、あるとすれば「自分たちが楽しければ、楽をして何かの結果が得られればいい」という感情だけだ。それが普通は「みんなで楽しく」に向くが、そいつらは真逆だってことだ。
人の不幸は蜜の味というがな、若くしてそれじゃあな・・・・・まあどうしてもいじめてしまうって悩む子もいるらしいが、とにかく俺は今お前のことを先にやらなきゃいけない」
コリコとの話で、何かつきものがとれたような気がした。
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