第23話 神の悪戯

「そのあと、どうしたの、コリコ・・・」

聞いていいのかどうかわからなかったけれど、どこか「昔のこと」というような吹っ切れたところも、今のコリコから見て取れた。


「そう・・・とにかく新幹線になったんだけど、やっぱり人間たちは大騒ぎになってな。まあ社外秘ってものだろうけど、確かに迷惑はかかった、でもそれが、誰か人間の首と直結していた訳ではなかったようだったから、俺はちょっと罪悪感はあったけれど、有頂天だった。でも新幹線になるのはしばらく止めようと、その当時の最新の車になった。そうして一人山道をドライブしていたんだ。そこで・・・

はあ・・・・・・」


疲れたような、一息おきたいように、コリコは麦茶を飲んだので、

「コーヒーでも入れようか、コリコ」

「ああ、お前は何て気のつく良い子なんだ! 今度そいつらが仕返ししてきたら、お前に内緒で絶対懲らしめてやる!! 」

「ありがとう、コリコ、その気持ちだけで十分だよ。牛乳も入れる? 」

「牛乳をちょっとだけ入れて、砂糖はいいから」

わかったよ。

小学生の時は寂しかったけれど、中学生になると、親が家にいない時間も有意義に過ごせるようになった。


 二人でコーヒーを飲みながら

ちょっと観念したような感じでコリコは話し始めた。

「山道を一人、本当に車だけでドライブしたんだ。町中を走るときは運転席も人の姿を写すけど、対向車もなさそうだったから、時にはスピードを上げて何てことをやっていた。すると、反対側から車の音がした。でもそれ以上に怖かったんだ」

「怖かった? 」

「すごい力を感じた、桁違いだ、妖怪のものじゃない力がこっちにやって来ていた」

「え? 何? 」

「多分、神仏のどちらか」

「え!!!!! 神様っているの? 」

「妖怪がいるから当たり前だろう? で、さ、さすがに背筋が凍るというか、新幹線になったことで人間に迷惑をかけた事を怒られるのかと思った。俺は神仏には会ったことがなかったから。でもさ・・・やって来たのは・・・・おんぼろの車だった」

「え? じゃあ違うじゃない」

「違うもんか、まず、運転者がいない。山道だから完全にハンドル操作が必要だ。ゆっくりと、その塗装が所々剥げかかった車が、俺の横を、無言で、古めのエンジンの音だけで通り過ぎていった・・・・・」


僕は「沈黙は金」と言う言葉を思い出した。

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