第18話 周到な計画

「真日君、やっぱりわざとだって気が付いたんだ。そうなるだろうってシナリオライターが」

「シナリオライター? ああ、モデルクラブの人の知り合い? 」

「違うわよ、同級生よ、知らないかな、あの・・・」


 名前は僕も聞いたことがあった。成績がとても優秀な、大人しい女の子だ。


「あなたがいじめられているって聞いて、私、はらわたが煮えくり返るってこんななのかと思うほど腹が立ったわ。職員室に怒鳴り込もうと思ったけれど、彼女から落ち着くように言われたの。それで、彼女と二人っきりで計画したことだったの」


 それから彼女は色々と楽しく話してくれた。「僕と付き合う」という案もあったけど、それは逆に状況を悪くしてしまう可能性が高いので止めたこと。この計画は最小限の人数で行わなければ情報漏洩でこれも更に事態を悪化させてしまうこと。

そして


「多分、真日君が気が付いて・・・私にお礼のようなことを言ってくるだろうけれど、その姿も人に見られないようにしなきゃいけないって彼女が言うの。とにかく、今回の事は直接的に真日君には関係ないというスタンスを長期間保つこと。出来れば卒業するか、三年生で同じクラスになるまでは、直に話さない方が、絶対にいいって。同じクラスになっても「仲がいい」みたいな姿は見せない方がいいだろうって」


「ありがとう・・・そこまで考えてくれているんだ」


「そうなの、でも厳しいというか、とにかく再発防止のためにね・・・」


僕のため、次の犠牲者を出さないためのシナリオはやはり簡単ではなかった。まずは僕たちが連絡を取り合うことの絶対禁止、それは彼らの妙に優れた嗅覚が察知する場合があるからだ。例え電話の登録の名前を変え、家だけで話すとしても、僕の名前が彼女の口から出れば、最悪の、今よりひどいことになる場合があるからだ。

彼女は僕と話しながら、スマホを見ていた。それはこの事件後

「一度だけ二人だけで話した時に、伝えておかなければならないリスト」が作成されていたからだ。しかもこのリストはこの後すぐに消去しなければいけないそうで、原作者曰く、原本はノートに書いたシナリオに残るだけにしたいのだという。しかもこのノートでさえ、鍵のかかる所にしまうという、念の入れようらしい。


「彼女、大人しい顔をしているけど、やっぱり頭が回るというか、すごいのよね、言葉も。とにかく真日くんにこう言ってって

「ネズミのくせに、オオカミのふりをした生き物が絶対に急に噛んでこないようにしたいんだって」」

それを聞いて僕は


「ネズミもとても優れた動物だよ」


「真日君なら、そう言うだろうって!! 」


「ハハハ!! お見通しなんだ」


僕らは、大切なこの日の会話を本当に楽しむことにした。


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