第30話 不思議と常識

 物理法則と常識的にと言うのは案外コリコが多く使う言葉だ。


「例えば俺が一反木綿さん(コリコは尊敬している妖怪にはさんをつける)に化けたからといって、空を飛べる訳じゃない。

それは不可能なんだ、マンガやアニメのようにはいかない。俺たち変化妖怪は、映像を映し出したり、実際にそっくりになることも出来るけど、それは表面上のことだ。こと人間の場合はわかりやすい、例えば体操のオリンピックの選手に化けたとしても、その技が出来るはずもない、経験が無いんだから。それは常識的だろう? その人間の経験、記憶まではわからない。幻術系の妖怪ならば深層心理を引き出すことは出来るみたいだけど、それは俺たちには難しい事だ。

妖怪にも色々いて、ただ変化はどの妖怪も多少は出来る、だが、問題は持続時間だ。俺たちは長い間そのままでいることが出来る、それが変化妖怪だ」

「油女さんたちは? 」

「出来ない、ほんの少ししか変化の力が無いから。だから・・・すごい厳しい特訓を俺のおじさんがやってるんだ、会社ぐるみで」

「なるほど!! それでステーションの人でコリコにぶっきらぼうな人がいるんだ! 」

「正解、でも最近そのこと謝ってくれたけど」 

妖怪も色々あるのだ。


「カシガジ、泊まるところは? 」

「森の中、だって普段は家の中だから、コレがうれしくって!! コリコは逆でしょ? 」

「今はね、時々雨がひどいときは真日が部屋の窓を開けてくれる、有り難いよ! あ、トイレどこだ? 俺人間になるとカフェインに激ヨワだった」

コリコは走って行ってしまった。その後ろ姿をカシガジは母親のように見つめていた。



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