リシアのお仕事その2 〜その後〜

「ね、リシア」

 うん?


 侑花とリシアは『大冒険』の末、無事生還した。

 ドラゴンも無事、亜空間の彼方に放り投げた。

 依頼達成だ。


「ジャニスの依頼、達成したんだよね?」

 うんそうだね。

「てことは、報酬貰えるんだよね?」

 うん? そうだね。

「よぉーし」


 侑花はほくそ笑んだ。

 祐一からの報酬が手に入るからだ。


「じゃリシア。早速祐一の家にゴー!」

 祐一は怪我してるよ? お見舞いが先なのでは?

「そんなのは後。お見舞いでご飯は食べられない」

 ……。


 どうしても『ご飯』にこだわる侑花だった。


 *


「祐一、気分はどう?」


 リシアの転移魔法で、直接祐一の部屋に押しかけた侑花は、ベッドで寝たまま驚いている祐一を見るや、開口一番ねぎらいの言葉をかけた。


 あり? 報酬は?

「……さすがに怪我人に『飯おごれ』はちょっとね」


 先ほどの発言は、瞬時に侑花の頭の中で撤回されたらしい。意外にも常識人な侑花だった。


「……いきなり押しかけてくるとは思ってなかったよ」


 祐一はさすがに最初、驚きはしたが、すぐに呆れ顔になった。


「魔法なんていう便利なモンがあるなら、使わない手はないでしょ?」

 その魔法を使ってるのはあたしなのですが。

「リシアもこれくらいいいじゃんよー。ケチケチしない!」

 ……出し惜しみしたいわけじゃないのですが?

「その魔法ついでにもう一つ」

 へ?


 侑花は背中に回していた手を、ばっと前に突き出した。

 それはオレンジ系で彩られ小さめの籠に入ったアレンジメントフラワーだった。


「ま、早く良くなって、私にご飯おごってよね」


 侑花は、明後日を向きながらそう小さく呟いた。

 日が傾き、西日が部屋に差しているせいか、頬が赤く染まっているように見えた。


 *


<リシア>


 ジャニスがリシアに直接語りかけた。


<何?>

<侑花ってさ。案外いい子だね>

<そだね。まさかちゃんと用意してるなんて。よくあたしを欺いたもんだわ>

<……体を共有してんのに気づかないリシアがどうかしてる>

<なんか言った?>

<いえいえ、なーんにも>


 こうして、祐一を始め、魔女二名を感心させた侑花だった。

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