侑花とリシア19

「さぁ、今日こそは祐一にご飯をおごってもらうわよ!」


 朝から侑花は息巻いていた。


 あたしはどうでもいいんだけどね。

「あんたがそんなだから! 丸っと一ヶ月も! 祐一とジャニスを放置しちゃったじゃない!」

 怪我が治りきるまではそっとしとこう、とか言い出したのはどなたさんでしたっけ?

「……ぅ。いや! でも! 一ヶ月は長いでしょ! 私は今、猛烈に反省してるの!」


 折しも今日は、侑花の両親が不在。その上学校はお休み。つまり昼食は自力で調達する必要があった。


「私には報酬を受け取る権利がある!」

 そりゃあるでしょうけどね。


 そう胸を張る侑花に、ため息をつくリシア(もちろん、実際にため息をつけないが)。

 実のところ、リシアはジャニスと顔を合わせたくなかった。

『新たな依頼』とやらが、また舞い込んでくる可能性があるからだ。

 その都度、侑花が祐一から得る報酬は増えるが、リシアは何も得をしない。

 せいぜい古い仲間と顔を合わせて、昔話に花を咲かせる程度だ。


「とにかく私はお腹が空いた。んで、私は今月分の『報酬』を受け取ってない」

 ……分かりましたよ、行けばいいのだね? 行けば!


 半ば投げ遣りに、『転移魔法』を発動させるリシアだった。

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