侑花とリシアと祐一1

「来たわよー」


 侑花は祐一の部屋にいた。土足だった。


「……前もそうだったけどさ」


 祐一はベッドの上に座り、しかめっ面で応じた。その膝の上ではシロがお行儀よく座っていた。


「なんでアポなしで来るかな。しかも魔法使って」


 シロがそうだそうだ、と言わんばかりに「にゃー」と鳴いた。


「いいじゃない、減るもんじゃないし」

 いや、あたしの魔法だよ? 減るんだよ?

「ささ、祐一。出かけるわよ」


 侑花はリシアの抗議をあっさり無視し、「さ、どこ行こうかな〜」とウキウキした表情を浮かべた。

 祐一のしかめっ面が、対照的だった。


「あのさ?」

「何さ?」


 祐一は、できる限り平穏に事を済まそうとした。

 たとえそれが無駄だと分かっていても。


「ええとさ。侑花。僕が今どんな格好してるか見えてる?」

「パジャマ」


 つまり侑花は、今日一日惰眠を貪るつもりだった、祐一の部屋に押しかけたのだ。


「若い者がさ、こんな天気のいい日さ、ジメジメした部屋に籠るのはどうかと思うのよ?」

「それは僕の都合じゃない? それとこの部屋、ジメジメしてない」

「とにかく私はお腹が空いた」

「は?」


 話が全然噛み合わない。


<ごめんねジャニス、侑花は言っても聞かないのだよ……>

<まぁここ一ヶ月、何時いつ来るかドキドキハラハラしてたけどね、今日とは思ってなかったけどさ。侑花はタイミングを外すのが上手いのかな?>

<やー。単なる思いつきだと思う>

<大変ねー……>

<ホントに……>


 魔女からも呆れられる侑花だった。

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