侑花とリシアと祐一1
「来たわよー」
侑花は祐一の部屋にいた。土足だった。
「……前もそうだったけどさ」
祐一はベッドの上に座り、しかめっ面で応じた。その膝の上ではシロがお行儀よく座っていた。
「なんでアポなしで来るかな。しかも魔法使って」
シロがそうだそうだ、と言わんばかりに「にゃー」と鳴いた。
「いいじゃない、減るもんじゃないし」
いや、あたしの魔法だよ? 減るんだよ?
「ささ、祐一。出かけるわよ」
侑花はリシアの抗議をあっさり無視し、「さ、どこ行こうかな〜」とウキウキした表情を浮かべた。
祐一のしかめっ面が、対照的だった。
「あのさ?」
「何さ?」
祐一は、できる限り平穏に事を済まそうとした。
たとえそれが無駄だと分かっていても。
「ええとさ。侑花。僕が今どんな格好してるか見えてる?」
「パジャマ」
つまり侑花は、今日一日惰眠を貪るつもりだった、祐一の部屋に押しかけたのだ。
「若い者がさ、こんな天気のいい日さ、ジメジメした部屋に籠るのはどうかと思うのよ?」
「それは僕の都合じゃない? それとこの部屋、ジメジメしてない」
「とにかく私はお腹が空いた」
「は?」
話が全然噛み合わない。
<ごめんねジャニス、侑花は言っても聞かないのだよ……>
<まぁここ一ヶ月、
<やー。単なる思いつきだと思う>
<大変ねー……>
<ホントに……>
魔女からも呆れられる侑花だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます