リシアの休日 中編

「さてさて。魔女といったら、やっぱり箒なのだよ」

 

 あーでもないこーでもないと、侑花と激論を交わしつつ選んだ服に着替え、リシアが指を鳴らすと、古めかしい箒が出現した。ボワン、ってなモンだ。

 早速またがるリシア。

 

 こらこら、そんなんで出かけたら目立つでしょうが!

「あり? 侑花、寝たんじゃなかったの?」

 寝付けないの! それよか、その箒! それで飛ぶ気じゃないでしょうね?

「だって、侑花。魔女といったら箒なのだよ?」

 いやいや、そういうことじゃなくて。私の体なんだから、私が箒で空を飛ぶことになるでしょ?

「そだねぇ」

 困る!

「何で?」

 普通、女子高生は箒で空を飛ばない。

「……ああ!」


 リシアは、今気がついたように、ポンと手を打った。

 

 あのねぇ……。

「大丈夫だよ、侑花。姿を消すから」

 姿を消す?

「そ。要は見えなければいいでしょ?」

 うーん。ま、まぁそうだけど……。

「ということで」


 リシアが指を鳴らすと、リシア(侑花)の姿が消えた。箒を残して。


「これで大丈夫」

 ホントかなぁ……。


 侑花の不安は正しい。正しいが、侑花とリシアはそれに気付いていない。


「んじゃ、仕切り直して」


 リシアは箒に跨がった。


 ああっ! スカート! スカート! パンツが見えるっ!

「大丈夫だよ。他の人には見えないよ」

 む……そこはかとなく不安が……。

「心配性だね、侑花は」


 リシアは、そんな心配性の侑花をよそに箒に跨がり(もちろん姿は見えないが)、ふわりと舞い上がった。

 傍目には、箒だけが急に空に飛び上がったように見えただろう。


 後に。

 箒だけが中を舞うという不可思議な目撃情報が多数寄せられ、侑花の母親は辟易したと言う。

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