リシアの休日 後編

「おお、やっぱり空はいいねぇ」


 風を切り、宙を舞う。

 リシアは久しぶりの開放感にご機嫌だった。


「侑花も見える?」

 ……。

「どしたの? 侑花?」

 高い所は苦手……。

「ほえ?」

 苦手なの! 高い所は!

「なぁんだ、そいうことなら」


 リシアはニマっと笑い、急上昇した。


 わわわっ! こらっ! リシアっ!

「あははは。侑花の苦手発見ー!」


 このアクロバット飛行はしばらく続いた。


「お、あそこに見えるはレンタルDVDショップではないかっ!」


 リシアはハイテンションを維持したまま、DVDショップに向け急降下した。

 侑花はじっと耐えていた。精神体とは言え、五感はリシアを通じて伝わってくる。

 もし侑花が実体だったら、気を失っていただろう。


「ほい到着」

 

 リシアは地に降り立ち、不可視化を解いた。


 あ! こら! 急に姿を現したら!

「……あ」


 周囲にいた老若男女の反応は様々だった。

 驚き泣き叫ぶ子供。それを宥めつつ驚いた表情を隠さない主婦。腰を抜かした初老の男性。


「あいやー。どうしよ?」

 消して! 今すぐ、姿消して!

「おお、ほいほい」


 再び、リシア(侑花)の姿が消えた。またも箒を残したまま。

 そして箒は、勢い良く空へ飛び去った。


 後に。

 そのレンタルDVDショップは、TVやらマスコミやらが押しかけ、『謎の怪現象。箒に乗った少女』が現れた場所として、大賑わいになった。その月の売り上げが普段の月の倍になったのは、店長だけの秘密だ。

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