侑花とリシア12

 ゴホゴホと、可愛らしい咳が部屋に響く。

 侑花は、あろう事に風邪をひいて寝込んでいた。

 いつも元気いっぱい食欲旺盛な侑花も、風邪には勝てないようだ。


 侑花、大丈夫?

「……ああ、うん何とか」


 心配そうに言葉をかけるリシアへ返す言葉に、いつもの覇気がない。

 相当キツいようだ。


「くそぅ、不覚だわ……風邪如きで身動きが取れなくなるなんて……」

 安静が一番だよ。風邪はしっかり寝て、栄養を取る。今日は朝から何も食べてないでしょ?

「食欲が……ああ、もどかしい。いつもの自分じゃないみたい……」


 ベッドの横にあるサイドテーブルには、パン粥が置いてあった。

 母の愛を感じるものの、残念なことに、すっかり冷めていた。


「パン粥って普通に食べても美味しいのに……今は何も食べたくない……」

 よぉし。じゃ、このリシアさんが、風邪の特効薬を作ってあげるのだよ。

「特効薬?」

 そう。魔女に伝わる、効果抜群の薬だよ。

「……でも、それ作るのに、体貸さないといけないよね?」

 ええと……そだね。

「動けないと思うよ?」

 うーん……。


 結局、魔女の特効薬は幻に終わったのだった。

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