侑花とリシア11

 侑花の行動パターンの一つして、何の予定も入っていない休日は、街中を散歩することにしている。

 寝て起きて、朝食を食べてしまえば、昼食まですることがないからだ。


 ええとだね?

「何かな、リシア君」


 侑花は、鼻歌まじりに応じた。

 

 ……もっと時間は有効に使うべきだと、あたしは思うのだよ。

「有効に? 有効ですよー? こうして散歩出来ることに感謝しなきゃ」

 感謝……んー感謝……。そこにある意図は何?

「青い空、白い雲。その下をのんびりと歩く。こんな有意義なことがある?」

 有意義、有意義……。


 リシアは、有意義の意味を繰り返し考えた。

 考えたが、無駄だった。


「それに歩けばお腹が空く。美味しいお昼が食べられる。ほら、ちゃんと意味があるでしょ?」

 そこですか……。


 侑花は、いつもの散歩道を悠々と歩く。

 お腹を空かせるために。


 ──人間て、ホント小さなことに喜びを感じるのだね。


 何となく、人間のこの世界における在り様を、垣間見たリシアだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る