侑花とリシア5

 侑花は学校から帰ってくるなり、机の上に参考書やら教科書やら筆記具やらをぶちまけ、椅子にどっかと座った。


 あれれ? 珍しいね。

「何が?」

 侑花が、自ら進んで机に座るなんて。

「あんたねー」


 侑花はふくれっ面で、リシアの言動に抗議した。

 もちろんリシアは侑花の中にいるので、それが見えるわけではない。


「私は女子高生なの。学生の本分は勉強。それのどこが珍しいっての?」

 ああいや、あたしはほら、なんだろうね? やっぱり珍しい。

「あんたは私をバカにしてる?」

 いえいえ。そんなことはないのだよ?

「じゃ、何よ」

 うーん、何と言うのかな。何かなかったかな、ことわざ的な。こうピカッと光るやつ。

「ピカっと光る?」

 そそ。いきなり光って吃驚するやつ。

「……もしかして、青天の霹靂って言いたいの?」

 おお! それだよそれ! 侑花、良く思い出したね!


 リシアは、えらいえらいと侑花を褒め称えた。


「やっぱりあんた私をバカにしてる!」

 

 侑花の手には、リシアのDVDコレクションの『一部』が鷲掴みされていた。


 あ、ちょっとちょっと! それどうするの?

「いかに私が温厚な性格とはいえ、たまに勉強する気になって、それをあろうことか『青天の霹靂』などと言われた日には! さしもの私も『堪忍袋の緒が切れる』わ!」

 おお、侑花。今日は冴えているね。

「…………」


 最期のリシアの一言。これは完全に余計だった。

 みしみし、バキバキ。

 哀れ、リシアのDVDコレクションはその形を歪め、割れ、無残な姿と化した。

 その後、リシアがふさぎ込んだことは言うまでもない。

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