第8話 これも一つの一心同体?

俺は佐野の中で二人の会話を聞いていた。


やばい。俺の深夜の探索が夢に影響していたらしい。あまり無茶はしないように気を付けよう。でももう少しなんだ。

毎晩少しずつ移動して、今は佐野の首の辺まで来た。そこから細い糸を出して、佐野の脳をツンツンしてる。確か後頭葉に視覚野があったはずだから、そこにアクセスして佐野の視覚から外が見えないかと奮闘中。


それにしても夢の中とはいえ、佐野の身体をナニしていたとは。今更興奮はしないけど。現実になる話じゃあないからな。

おまけに佐野は俺が気になっていたらしい。こうなる前に早く言えよ。

いや、夢に出たからそうなったのか?まあどうでもいいんだが。


それから佐藤礼子。ちょっとめんどくさい。確かに告られたけど、ああいう「私が告ったことを嬉しく思いなさい」みたいな感じは嫌だ。

ちょっとケバいし。おまけに断ったら何で断るのかってキレだすし、しつこいし。

佐野が被害を受ける前になんとかしなくちゃ。とはいえできることは何もないが。


その夜。俺は思案していた。佐野に感づかれないように更にペースを落として探っていくか、危険を承知で一気に攻めるか。


行けそうな感触はある。たぶん繋がるんじゃないかと思う。


俺は佐野が一番深い眠りにつくタイミングを見計らって一気に身体を佐野の脳みそまで移動させた。


「あっ!」


佐野が叫んだ。ちょっと艶めかしい。ダメか?じっと動かず様子を見る。


・・よし、寝たままだ。俺は佐野の脳みそに同化するようにその身を置いた。


正確な時間はわからない。でもまぶたの向こうが少しずつ明るくなっていくのを感じる。佐野のまぶたが開いた。見慣れない天井。そして部屋。

感動だ。俺は今、佐野の目を通して世界を見ている!


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