第14話 信じるものは救われ・・・る?

「まだ信じきれたわけじゃないけど、朝の言動や今の会話?を聞いてると、美由紀の中に寺島君がいる前提でこれからを考えたほうが良さそうね。」


第三者の須山がいると話が整理できてありがたい。


「ねえ、今日の私って絶対変な人に見えたよね?寺島君がいるって、みんなにバレたかなあ?」

「いやあ、直接聞いた私でもまだ半信半疑だし、さすがにそう思う人はいないでしょ。」

「そうだよね。でもあれが素の私と思われても困るというか・・・。」

「普段怒らない美由紀を怒らせると怖いっていうのもいいんじゃない?」

「そんなこと言わないでよ~!」


『なんかすいません。』

何度言ったかわからないが、とりあえず言い続けなくちゃいけない謝罪を繰り返す。


「あのね、美由紀と寺島君が同じ口から喋られると、ホント混乱するんだ。美由紀は右手、寺島君は左手を上げてから喋ってくれる?」

『「はい、わかりました。」』


「今のはどっちが答えたんだろう?」


まずは現状確認。その結果わかったことは、

○俺は佐野の身体を自由に動かすことができる。美由紀も当然可能。ただし、それぞれが別の動きをしようと思ったときは、主である美由紀の意思のほうが強い。

○ただし、筋肉に二つの違う指示が出るため、身体に負担がかかる。

○視覚などは俺の意思でカットできる。聴覚、嗅覚等は現状無理。

○過去の経験から、睡眠については独立。佐野が寝ていても俺は起きていられる。逆も可(少しは俺も寝てるのよ。特に授業中)

○互いの思考については完全に独立、というか、何を考えているかまではわからない。

まあこんなところか?


「バカ寺島!あんたもしかして私のお風呂んときとか着替えのときって、見てたの!鏡越しに!」

『あのなあ、俺は仮にも死んでしまった可哀想な男なのだよ。バカはないじゃない?バカは。』

「うっさい!バカで十分でしょ!」


「うーん、やっぱりシュールな光景だ。」

須山があきれた顔で言う。


「まあ今までのことはしょうがないから、視界がカットできるなら、これからは見ないこと。約束できる?美由紀もそれでいい?」


美由紀が不承不承うなずく。俺も同意。ってか、もうばっちり目に焼き付いてるぜ!

それから、触覚についてはあえて机上に載せていない。バレたら市中引き回しの上獄門磔決定である。


「それから、今朝みたいなことはできるだけ我慢すること。美由紀が変人扱いされるんだからね、わかった?悟。」

『んっ?いきなり名前呼び?』

「寺島君とかめんどくさい。もう悟でいいでしょ。私のことは加奈子でいいから。」

「じゃあ私はバカるでいいや。バカる。」

『なんじゃそりゃ。』


大いなる不安は一回脇に置いて、とりあえず笑った。

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