第31話 初デート、ラストデート

「今度の日曜日、遊園地にいこうよ。」

『なんだよ急に。加奈子と一緒にか?』

「ううん、悟と二人で。」

『二人でって。見た目はお前だけだろ』

「いいからいいから。」


で、なぜか遊園地にいる。


ジェットコースター、コーヒーカップ・・・

はた目からみたら女子高生が一人ではしゃいでいる。他人からみたら変な子にしか見えない。

それでも声をかけてくる勇者はいる。


「ねえ一人?さみしくない?俺たちと一緒に遊ぼうよ。」


二人組のそこそこオシャレな高校生だ。


「いえ、連れがいますから。」

「さっきから見てるけど、ずっと一人じゃん。」

「いえ、ちゃんといるんです。」


さすがに気持ち悪くなったのか、しつこく誘わずに二人組は去っていった。


『なあ、やっぱり変にみられると思うぞ。こんど加奈子と一緒に来よう。今日は帰ったらどうだ?』

「いいからいいから」


美由紀はハイテンションのまま、アトラクションを楽しんだ。


夕方。観覧車に乗ろうとするとスタッフのお姉さんが怪訝な顔で聞いてきた。


「あの・・お一人ですか?

「いえ、二人です。」

「はあ・・」

それ以上は追求せずに、観覧車に乗せてくれた。


山向こうに沈んでいく夕日がきれいだ。


しばらくすると美由紀が口を開いた。


「・・・消えちゃうの?」


ドキッとした。まさか知ってる?


『なんだよ、消えるって』


「悟、カットが甘いよ。加奈子との会話、なんとなく聞こえてたもん。」


道理で、急にカットされてもその後追求されなかったわけだ。


『・・・聞いてたんなら理由はわかるよな。』


「私なら大丈夫だよ。身体は何ともないし・・・」


『いや、今はそうでも、いつか何か起こったら遅いんだ。俺は美由紀に普通の幸せをつかんでほしい。』


「普通ってなによ。」


『普通は普通だよ。好きな人が目の前にいて、たとえばこんな観覧車に乗って、告白されて、キスして、結婚して、子供産んで、孫に囲まれて、そんな普通の幸せだよ。俺じゃ、お前にそんな幸せを与えることはできないんだ。』


「いいじゃん、普通じゃなくたって!私は悟とこうしているだけで幸せなんだから!だから消えるなんて言わないでよ!」


『美由紀、俺はお前が好きだ。だからお前には幸せになってほしいんだ。お前を包んでくれる人に出会ってほしいんだ。わかってくれよ。』


しばらく泣き続けた美由紀は、最後に言った。

「わかった。でも消えるときは私に決めさせて。勝手に消えたら承知しないから。」

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