第30話 決心
『今日の美由紀のつぶやき、お前も聞いてたろ。』
「聞いた。美由紀はあんたのことが好きよ。あんたはどうなの?」
『好きだ。俺の身体があったら抱きしめたいよ。』
「そうか、それは嬉しいけど、きついよね。やっぱり美由紀からは出られないの?」
確証はない。でもおそらく無理だろう。いわば俺の命は美由紀から補給してもらっているようなものだ。それが将来美由紀の身体にどんな影響があるかもわからない。
『たぶんね。そう長くない間に消滅すると思う。』
「じゃあ誰かの身体に乗り移るとか?」
『出来る出来ないの前に、急に違う意識が入ってきたら嫌だろうよ。そいつの意識が消えるわけでもないし』
「そっか、そうだよね。じゃあ美由紀の身体から赤ちゃんになって生まれてくるとか。」
『お前、発想が怖いわ。そうだな、それは・・・いや、精子が必要だし、他の誰かに抱かれるのは心身ともに嫌だ。』
「じゃあどうするの?ずっと美由紀と一緒でもいいと思うけど?」
『いや、美由紀の気持ちは嬉しいけど、この状態だと美由紀の心は壊れるかもしれない。それに将来の身体への影響も心配だしね。近いうちに美由紀の身体から出て、消えようと思ってる。』
「そう、そうか。せっかくいい友達ができたと思ったんだけど、残念ね。でもありがとう。」
そういって加奈子はひと筋だけ涙を流した。
『そんときは美由紀を支えてやってくれよ。頼む。』
「ん。わかった。」
これで少しは安心して旅立てるかな。
「悟、あんたやっぱりいい男だよ。」
ありがとう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます