第3話 衝撃的な体験をしました

意識が戻ってから2日目。事故にあったのが4日前。二日間は意識がなかったらしい。

頭を強く打ったので、大事をとってしばらくは入院と言われた。

4人部屋には私ともう一人。静かな人で挨拶くらいしかしていない。それにあまり喋りたい気分でもない。窓の外のビル群をぼーっと見たまま、私は動くこともできなかった。


寺島くんが死んじゃった。もちろん私のせいじゃないけど、クラスメイトが目の前で、というか、私にぶつかって亡くなったのは辛い。あの時の光景を何度も何度も思い出していた。


同じクラスだけどあんまり話したことはない。部活にも入ってないし。

何とかっていう戦う系のジムに行ってるっていうのを噂で聞いたことがあった。

高校2年生っていうと大人と子供の端境期みたいな時期で、大人っぽい人からまだまだ子供だなと思う人もいる。寺島君は割と落ち着いてて、でもその分話すきっかけがない感じ。それに戦う系の人って何か怖いし。


でも図書館で、寺島君が借りようとしていた本は私が大好きな本で、へえ、こういうの読む人なんだ、と思ったら、それからなんとなく目で追うようになっちゃったんだよね。

まあ、恋、とまではいかないけどさ。


あの日、参考書を買うために大きな書店に行った帰り、いつもと違う道を歩いてたら目の前を寺島くんが歩いていていた。寺島君のうちってこっち?この前読んでいた本の感想を聞いてみたいな、って考えていたら、少し先の公園からボールが転がってきた。

その後を女の子が走ってきて、車道に飛び出した。


「危ない!」って思ったけど身体が動かなかった。その時、寺島君が動いたのは見えたんだよね。その次の瞬間、ブレーキ音と、直後の大きな音がしたと思ったら、目の前に飛んできた寺島君の身体があった。


一瞬、目が合った気がした。そして暗転。

気が付いたらお母さんが泣いてた。

寺島君、死んじゃったんだよね。でもなんかそんな気がしないや。悲しいっていう気持ちがあんまり湧いてこない。

やっぱり恋じゃなかったのかな?女の子はどうなったんだろう。


そんなことを考えているうちに意識が遠くなった。

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