第4話 千里の道も一歩から
とりあえず寝たみたいだ。それでもしばらくは我慢我慢。
下手に動いて気付かれたら、開腹手術で捕獲されて実験動物、なんてことにもなりかねない。
実体があるとは思えないけど。大きく動くのは佐野が熟睡している時間限定。
とりあえず今は今後のことを検討しよう。
まずは現状確認。寝たことがわかったってことは、佐野の行動を感じることができるってこと。神経伝達かなにかの同調?よくわからん。
さっきの佐野の反応だと俺は佐野の胸のあたりにいるらしい。でも内臓に閉じ込められてるような感じもない。存在としてはあるけど、佐野の細胞と俺の身体?は同じ空間にあっても問題ないらしい。意識を向けると、そこに佐野の肉体があることも感じる。触れる幽霊、って感じか?エーテル体とかだっけか?よくわからん。とにかく、慎重に動けばいろいろ動けるかもしれない。
視覚は、不明。明かりはないし。あっても意味ないし。嗅覚もなし。聴覚はあるみたい。ってか、骨伝導みたいなもんか?
触覚も意識すればある。味覚、不明。痛覚、不明。
それにしても、これも女の子に触っていることになるんだろうけど、まったく嬉しくない。外からと中からでこんなに違うものなのか。中から触る、言葉だけなら無茶エロいんだが。
佐野が深い眠りに入ったようだ。それでも最初から大きく動くのは危険。まずは自分の身体(?)を思い通りに動かせるか確認する。まずは意識を広げて、存在を意識する。なんとなくだけど感じる。一部だけ、ほんの少しだけ動かせるか?俺は人間でいえば右手の辺の
身体に意識を集中させた。いけそうだ。でも大きく動かすと気づかれる。
俺は動きそうな右手(?)が細くなるように意識を集中させた。
細く細く、針よりも細く。
細胞の隙間を進めるように細く。
時折聞こえる佐野のうめき声にビクビクしながら、少しずつトレーニングを続けた。
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