第17話 最強の二人羽織だね
こうして悟との共同生活(?)が始まった。
着替えと入浴については悟を信用するしかない。要は慣れだ。そして、意外にメリットもたくさんあった。
まずは勉強。私は英語や国語は得意なんだけど、数学とか物理みたいに数字や公式には拒否反応を示しちゃうタイプ。
その辺は悟の得意分野みたいで、テストのときは悟に任せる。
これってカンニングじゃないよね?だよね?
少々ずるい気もするが、全体的に成績が上がって、親もホクホクである。
そして運動。私はもともと陸上部に所属している。高跳びが専門だ。とはいってもエースじゃないし、成績も真ん中くらいだけどね。
先生の許可が下りて陸上部に復帰したときは、こんなに鈍っちゃうんだってくらい身体が動かなかった。やっとなんとかついていけるかな位までは戻ったけど、前々からコーチに指摘されていた踏切のタイミングと足の角度の悪さが戻ったというか、わけがわからなくなったというか、前ほどの高さも飛べなくなっていた。
身体が無意識に動いて綺麗な飛び方をしたときは、悟が私の身体を動かしたらしい。
あれから、ときどき悟に飛んでもらって、自分の癖を修正してもらった。
少しずつバーの高さを変え、結局自己ベストを超え、エース級とまではいかなくてもチーム内でかなり上位の高さを飛べるようになった。
悟は噂通り格闘技をやっていて、身体の使い方の理論や実践を私の身体に合わせていろいろ試していた。男と女の関節の可動域の違いとかあって、大変だけど楽しかった。
「ちょっと美由紀、なんか全体的に性能が向上してるんだけど、もしかして悟のおかげ?」
いつものカラオケボックス。さすがに事情を知っている加奈子にはごまかせない。
「・・・すいません。ズルしてます。」
「やっぱり!いいなあ、悟を私にも貸してくんない?」
ここで私の右目がウインクをした。うなずく。
『そんなことできるか!だいたい俺はスキルアップ便利君じゃない!』
「おっと悟登場。やっぱり不思議な光景よね。で、どう?美由紀ホームの居心地は。」
『まあなんとかうまくやってる。でもこいつ、運動したあとギャーギャーうるさい。』
「当たり前でしょ!翌日の筋肉痛、半端ないんだからね!」
『やっぱり男と女ってって違うんだよな。ついつい昔みたいに身体を使っちまうから。』
「んもう!」
部活の時はいいのだ。ある程度使い分けてるから。それ以外の体育のときは悟が出たがって、それはまあいいのだけれど、よほどうれしいのかむちゃくちゃ身体を使いたがる。思わずブレーキをかけてしまい、筋肉が悲鳴を上げる。で、翌日の苦しみってわけ。
「やっぱり不思議な光景だ。一人二役夫婦漫才。」
「違う!」
同時に否定したので、私が言ったのか悟が言ったのかわからない。
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