第20話 幼女の霊感恐るべし
美由紀の足が完治するのを待っていたので、俺が助けた女の子を訪問するのは3週間後になった。とはいえ、その間美由紀が痛い思いをすることはなかった。
何と俺は挫いた足首の痛みをカットすることに成功したのだ。
所詮は電気信号だからね。もちろん腫れてるから、松葉づえは使わせたが。
困ったのは女の子の名前と住所の情報を得ることだった。
警察に聞いても「なぜ知りたがるんですか?」となかなか教えてくれなかった。
俺と美由紀が知り合いだったから、難癖でもつけに行くと思われたらしい。
きっと寺島君も女の子が無事かどうか心配で成仏できないと思うんです!
なんなら婦人警官さんと一緒でも構いません!
半ば泣き落としの演技で同情をひいて、家でなく事故近くの公園で会うことを許してもらえた。
演技過剰だ!ってあとで美由紀にこっぴどく怒られたが。
『こんにちは、佐野美由紀です。』
「初めまして。志桜里の母の志保です。」
「こんにちは、志桜里です。」
志桜里ちゃんは小学校1年生だ。
母親の志保さんは戸惑った様子だ。
そりゃそうだろう。トラックの運転手でもなく、助けて死んだ俺でもなく、ただ巻き込まれた美由紀相手だから、ご迷惑をおかけしました、とかありがとうございました、みたいな挨拶も変だ。まあクラスメイトが助けた子に会いたかった、という理屈で納得はしてもらっているが。
「寺島さんには本当に感謝しています。娘のせいで亡くなってしまったのはあちらの親御さんには申し訳ない気持ちでいっぱいですが、娘がいなくなったら私、生きてはいられませんでした。」
『寺島君も志桜里ちゃんを助けることができてうれしいと思います。だからそれでいいんです。』
強がりではなく、志桜里ちゃんが元気で俺はうれしかった。
その志桜里ちゃんは不思議な顔をして俺を見ている。
「ねえお兄ちゃん、何で女の子の服を着てるの?」
「志桜里、何てこと言ってるの。お姉ちゃんじゃない。」
「違うよ、お兄ちゃんだよ。」
やばい、小さな子は霊が見えるっていうけど、あれか?
すまん、美由紀、バトンタッチ!
俺は美由紀の意識の後ろに隠れた。
「えっ?あっ!あれ?お姉ちゃん、そんなに男っぽくみえる?」
美由紀が慌てて取り繕う。
「あっ、お姉ちゃんになった!すごい!不思議!」
「この子ったら、変なこと言って。ごめんなさい美由紀さん、普段こんなことを言う子じゃなんですけど・・・」
「いっ、いえ、気にしないでください。」
これは早々に立ち去ったほうが良さそうだ。
「それじゃ、志桜里ちゃんの元気な姿が見れて良かったです。これで失礼します。」
「あっ、あの、警察の方からは家じゃなくて公園で、って言われたんですけど、是非うちにお越しいただけませんか?お茶でもと思って用意してあるんです。」
「いっ、いえ、今日はその、用事がありまして。」
「お姉ちゃん、今度一緒に遊ぼうよ。ねっ?」
「じゃあ是非今度またゆっくりお越しください。」
美由紀は家の場所を教えてもらい、連絡先を交換した。
もし今度また来るとしたら、最初から最後まで美由紀でいたほうが良さそうだ。
それにしても小学生の霊感恐るべし。
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