第34話 死の砂漠
「で、デジャヴだ」
俺は今、首からプラカードを吊り下げている。しかもボコボコにされてだ。プラカードには私はふしだらな人間ですと書かれてある。
「何か言ったかしら?」
エリカの笑みに対して俺は首を横に振る。
うぅ、他の客からの目線が痛い。男だったらあんな事されたら着いて行ってしまうだろ……
「何か変なこと考えていませんか?」
「い、いえ……」
2人は昼食を取っているが俺は正座だ。……悪いのは俺だけどさ。
因みにお金はエリカが貸してくれることになった。今回のダンジョンでお金を稼ぐのは無理だろう。というか借金がのこりそうで怖い。
「兄ちゃん。これは俺からだ」
そう言って店主が俺の目の前に肉の乗った皿を置いてくれた。
「これは……」
「安心しろ無料だ」
「うぅ、店主ぅー」
人の温かみに触れて涙が溢れてきた。ハグしてやろう。
「気持ち悪い抱きつくな!」
がすぐに拒否されてしまった。仕方ないか。
「ところで店長さん。この街の方は何故全員武装しているのですか?」
ソフィアが突然店主にそんな質問をした。それどころじゃないから忘れていたが、俺も気になっていたんだ。
「それは街の近くにあるダンジョンの最奥にアーレス様が、使用されていたという槍が祀られているからだな。この町はアーレス様を信仰する人たちが多いんだよ」
祀られているというか誰も誰も取りに行けてないだけだろ。
だがなんとなく理由が分かった。アーレスは戦の神だ。そんな神を信仰する人達だ武器を携帯していてもおかしくはないだろう。
「ん? 今回の目的って槍の回収だったわよね?」
エリカがこちらを見ながら尋ねてきた。
「ああ、アーレス神の槍を回収。それが今回ここまできた目的だ」
すると俺たち以外の全員の動きが止まった。
「見たところ学生の様だから忠告するがやめておいた方がいい。今まで信者や腕利きの冒険者が槍を取りに行ったが全員失敗している」
店主がそう言った。
「ただのダンジョンでですか?」
ソフィアが首を傾げる。
「槍のせいで魔物が強くなっているからだろ?」
「知っていたのか」
俺の言葉に店主が頷いた。
「まあ一応。でも安心してください。俺たちもそこら辺の冒険者よりかは強い自信があるんで」
「まあいい。忠告はしたからな」
そう言って店主はキッチンへと消えていった。
それから俺たちはご飯を食べた。勿論俺がテーブルにつける事はなかったがな!
ついでに言うと店を出るまでプラカードを取れなかった。
店主から道具屋を紹介してもらい、装備を整えた俺達というか俺は今死の砂漠の目の前まで来ていた。
「砂漠という割にダンジョンは地下にあるんですね」
ソフィアがそんな事を言った。まあ気持ちはわかるな。
「そうね。それにかなり強い力を感じるわ」
それは俺も感じている。が、前に経験したダンジョン程の薄気味悪さはない。
「じゃあサクッとクリアしようぜ」
「ええ、そうね」
「はい」
俺を先頭にして俺達はダンジョンに侵入した。
「うっ」
ダンジョンに入って最初に感じたのは暑さだ。外はちょうどいい温度だったのに中は地獄の様に暑い。まるで本当に砂漠にいる様だ。
それは他の2人も感じた様で暑いとボヤいている。
さらに階段を降りると広い空間に出た。上を向くと太陽? の様なものが出ていて周りは開けていて草などは生えていない。本当の砂漠みたいだ。
「なんでダンジョンに太陽が……」
「これも神の槍のせいか」
あれから店主が教えてくれたが槍を祀ってからはダンジョンの内部に変化が起きていって、今の形、死の砂漠になったらしい。
「どうしますか?」
「普通のダンジョンとはかなり違うがここがダンジョンである以上下に降りる階段があるはずだ。まずはそれを探そう」
俺の言葉に2人は頷き、いつでも戦える様に武器を抜いた。
俺も身体強化の魔法を全身にかけておく。
「行くぞ!」
「と言ったものの、なにもねぇ……」
あれから1時間くらい歩き回ったが、階段らしきものは見つけられなかった。さらに言うと迷子になってしまった。
「ルシフェルも何も見つけてないみたいです」
ソフィアには召喚獣を読んでもらっている。そっちの方が効率がいいからだ。
確か死の砂漠は3階構成のダンジョンだったはず。後これを3回も繰り返さなくちゃいけないのか。
「これじゃあ拉致があかねぇ……仕方ないちょっと無理やりだがやってみるか。2人は少し離れてくれ」
「分かったわよ、行きましょ」
「はい」
2人は素直に離れてくれた。
そしてなんで2人に距離を取ってもらったかと言うと地面をぶち破るためだ。
以前マーリンが地面をぶち抜いて最下層まで行ったと言う話を聞いてそれを真似しようとおもったのだ。
「フレアッ!!」
俺は地面に向けて爆発する魔法を投げる。魔法は地面に当たるとドカーンという大きな音に爆発した。
「うっ」
俺はその爆風に巻き込まれ吹き飛ばされてしまう。
「ちょ! 大丈夫!?」
エリカが慌てて俺の方へきた。
「ああ、それより穴は貫通したか?」
ソフィアに聞くがソフィアは首を横に振った。
「やっぱダメかー、マーリンのやつどんだけ馬鹿力なんだよ……」
「ダンジョンの床を突き破ろうなんでできるわけないじゃない。ダンジョンは魔力で作られているからとても硬いのよ」
と呆れた目で言われたが、それをやった奴がいるんですよね。
「でもどうします? このままじゃ……」
ソフィアの声が途中で止まる。
ドドドドドドと地鳴りが聞こえるからだ。
「もしかして成功したか?」
時間差で地面に亀裂が入ったのか?
「…………違うわ!」
エリカが辺りを警戒し始めた。
「モンスターよ!」
その言葉に辺りを見渡すと四方八方からモンスターがこちらにきているのか砂埃が舞っている。
「何かいう事はありますか?」
ソフィアの笑顔が怖い。
「ほんとすみませんでしたぁ!」
土下座する。地面に頭を擦り付けて本気の土下座だ。
「何馬鹿やってんの! この状況を切り抜けるわよ!」
エリカに怒られる。
「そうですね!」
「おう!」
俺とソフィアは構えを取りモンスターがいつきてもいいように準備するのだった。
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