第20話 ダンジョン突入!
「却下だ」
俺の願いは即却下された。
いや、でもこれはないだろ。引率がマーリンでメンバーがソフィアとヒーデリックだぞ?
どんな罰ゲームより酷いぞ。
「ではさっさとダンジョンに向かうぞ」
「「はい!」」
俺以外の2人は元気に返事をするが俺は返事する気になれない。
「……リック?」
マーリンの目つきが怖い。
「……はい」
俺は渋々返事をした。
そしてマーリンが移動を始めたので俺は諦めて着いていくのだった。
ところ変わって馬車の中俺達は学園を出てダンジョンへ向かっている。
「それにしても楽しみですね、ダンジョンにはお宝が眠っていると聞いています」
ソフィアが楽しそうに口を開いた。
……本当に楽しんでいるのかどうかは分からないがな。
「はい、僕も楽しみです。なんと言っても強欲の賢者であるマーリン先生の引率で、救国の聖女であるソフィアさんと一緒のパーティーなのですから。……まあ余計なのもいますが」
そう言ってヒーデリックはこちらを見てきた。
余計で悪かったな。俺だってお前とパーティーなんざ組みたくねぇよ。
と内心で毒づく。
「ヒーデリック君、喧嘩は良くないですよ」
ヒーデリックの手を掴み上目遣いでソフィアはそう言った。
それをされたヒーデリックは顔を真っ赤にしている。
「は、はい」
本性見抜けてないの乙。そいつ内心ではチョレーwwwとか思ってるぞ。絶対。
……まあ俺もゲーム知識無かったらそうなっているだろうがな。
「そうだ! リック君の事をよく知ってもらう為に何かしてもらいましょう!」
黙っていたのにこっちに飛び火してきたぞ。しかも首輪のせいでこれは命令になる。
「な、なにかとは?」
「なんでもいいですよ。無理にとは言いませんが大丈夫ですか?」
側から見ればこれはお願いだろう。でも俺からすればこれは命令だ。
「やらせていただきます。ではこちらをご覧ください。こちらはただのコインです。ではこのコインを瞬間移動させて見せます」
そう言って俺は胸元からコインを取り出す。この世界のお金だ。
「転移魔法でも使うつもりだろ」
ヒーデリックが早速難癖をつけてくる。こいつ仲良くなる気ないだろ。
「いえいえ、魔法は一切使いません」
「では今からこちらを右手で包みます。見ていてくださいね」
「ではおふた方のどちらか手を出してくれませんか」
「では僕が」
ヒーデリックが名乗りを上げた。俺に難癖をつけるつもりだろう。顔にそう書いてある。
ソフィアは俺の方をただ笑顔で見ているだけだ。マーリンは何も言わず腕を組み片目でこちらを見ている。
「ありがとうございます。では今からヒーデリックの手の上にコインを瞬間移動させます」
そう言って俺は左手をヒーデリックの手の上に置く。
「こちらの右手に力を入れるとー、3、2、1、ハッ!」
「何故だ!?」
コインがヒーデリックの手の上に乗っている。まあこれは魔法ではなくマジックだ。
俺が元の世界で宴会芸として覚えたマジックだ。
合コンに行った時のために覚えたマジックがこんな時に役に立つなんてな。
……結局合コンで使うことはなかったけどな! というか行ったこと自体ないけどな!
「おーー」
パチパチとソフィアは手を鳴らす。
横目でマーリンを見ると興味を無くしたかの様に外を見ていた。
「何をした!」
ヒーデリックが詰め寄ってくるがそれを教えるわけがない。
「マジックは知らないからマジックなの。タネを知ったら面白くないだろ?」
そういうがヒーデリックは納得していない。
どうするかなと考えていると馬車が止まった。
「遊ぶのもいいがここまでだ。出るぞ」
どうやらダンジョンに到着した様だ。
俺達はマーリンの指示に従い外へと出た。
外に出ると地下へと続く洞窟が目の前にあった。
奥からはかなりでかい魔力を感じる。
「これは……」
ソフィアが息を呑む。
それもそうだ。最初からこんなでかい魔力の主がいるダンジョンに行くなんてどうにかしてる。
「今回貴様らに攻略してもらうダンジョンは他のパーティーが挑むものより難しく設定されてある」
「ですが先生、これは余りにも……」
ヒーデリックの言う通りだ。こいつと意見が合うのは癪だがこれはおかしい。
「そうだぜ、マーリン先生。この奥からはとんでもない魔力を感じるぞ」
「だろうな。ここのボスは魔人だからな」
「魔人!?」
俺は口を開く。冗談じゃない。魔人といえば魔王の部下でとても強い。だがそこに驚いた訳ではない。魔人が出現するのは魔王が復活してからのはずだ。
だから今のこの世界にいるわけがないのだ。
「魔人なんて御伽噺に出てくる存在でしょう!」
ヒーデリックも慌てている。顔も心なしか青い。
「魔人と言っても人工魔人だ。魔人になろうとした人間の成れの果てさらに言えば失敗している。
……そいつがいるダンジョンを攻略するのが今回のお前らのミッションだ。ついでに言うとアタシの所に来た依頼でもある」
「ふざけんな! なんで俺らがマーリン先生の手伝いの為に!」
「安心しろ魔人はアタシが倒す。それまでの道中のモンスターを貴様らで倒せ。それにこれが終わったら美味いもの食わせてやる」
「ですが……」
ソフィアも反論しようとする。
「お前は救国の聖女なんだろう? これくらいできる様になれ。そしてヒーデリックとリック。お前達も一年の中では実力は高い。お前達ならできるさ、というかやれ。命令だ」
結局それかよ……
「実力で言えばエリカも高いんじゃないですか?」
実力で言うならエリカが一番強いはずだ。
「王族を危険な目に合わせるなと上からのお達しだ」
「さいですか」
俺はその一言で納得した。
「話は終わりだ。全員行け。アタシは後ろをついていく」
その言葉で俺達は前に出る。逆らったら絶対キレるし。有無を言わさぬ威圧感もある。
歩いているとちょんちょんと腕を引っ張られた。
「私の事守ってくださいね」
ソフィアだ。
「……はい」
……これは楽しい楽しい、ダンジョン攻略になりそうだ。
俺は現実逃避をしながらダンジョンへと進むのだった。
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