第19話 ダンジョン
「今日は貴様らに面白い話があるぞ」
授業が始まり、マーリンが開口一番そんな事を言った。
「なんでしょうか?」
レオンが質問をする。うん、いつも通りだ。
「明日から貴様ら一年全体で、ダンジョンの攻略をして貰う」
いや、俺は知ってたけど急すぎるだろ……
こう言うのって普通もっと早く言うべきなんじゃないか?
現にみんな困惑している。
何故俺がこの事をしっているかというと勿論ゲーム内のイベントがあったからだ。
5月前になるとダンジョン攻略イベントが発生する。
このイベントはチュートリアルの様なもので、これをクリアすると色々なダンジョンに好き放題入れる様になる。
チュートリアルとはいえ、一応ボスも存在している。また組み分け攻略するダンジョンは完全にランダムになる為、少しではあるが難易度が変わったりもする。
「何故もっと早く教えてくれなかったのでしょうか?」
「えっ、うーん……まあなんだ。何事も突然起こる物だ。そんな時に対処できる力をつけてもらいたくてだな」
嘘だな。頭を掻いてるし、視線も泳ぎまくっている。どうせ職員会議みたいなもので言われて思い出したのだろう。
「そうだったのですか……」
「まあそう言う事だから今日の授業はなしでいい。貴様ら明日の為に準備をしておけよ。
あぁ、それと一年全体で班を分ける。そこで選ばれたチームに入る事になるから他のクラスのやつと問題を起こすなよ。特にリック」
「なんで俺だけ名指しなんだよ……」
クラスメイトからクスクスと笑い声が漏れる。
「では、解散!」
マーリンはそう言って教室から出た。
すると他の生徒達も立ち上がり各々で帰るなり、集まったりしている。
「リック、これから一緒に道具屋に行こうと思っているんだが一緒に行かないか?」
レオンが声をかけてくれた。
横にはリンもいた。
「おっ、願ったり叶ったりだ! 一緒に行こうぜ」
そうして俺達は教室を出た。
俺達は学園を出て道具屋へと向かった。向かう途中の街並みに少し感動してしまう。完全に中世ヨーロッパって感じだ。まるでタイムスリップしたかの様な気分にもなる。
「どうかしましたか?」
俺がキョロキョロ歩いているのを見たリンに声をかけられた。
少し浮かれすぎたか。
「ずっと学園にいたせいで外に出たのが久しぶりだからな。やっぱシャバな空気は美味いぜー」
「シャバってお前な……」
レオンに呆れられる。隣ではリンが苦笑いをしている。
「それより2人は道具屋で何か買うつもりなのか?」
「私は回復アイテムを買おうかと思っています」
ああ、大事だよな。回復アイテム。
「俺は武器だな。今使っている剣ではダンジョでは通用しないかもしれないし」
武器も大事だよな。攻撃力上がるし。
「2人ともいいなー、ちゃんと考えてるなー」
うんうんと頷きながら言う。
「そう言うリックは何を買うんだ?」
「あ? 俺か? 何も買わないぞ。いや、どちらかと言うと買えないだな」
驚くことに俺の所持金は0だ。
学園の中にいると学食もタダだしお金を使う機会もなかったからあまり気にならなかった。
まあリックの家は貧乏だし仕方ない。あるものでなんとかするしかない。と言っても防具も武器もないがな! ガハハハハ……ハァ。
「なんだお金がないのか?」
「まあそんなところだな」
「そ、その私で良かったらお金貸しますけど……」
リンはいい子すぎる。涙が出そうだ。
「いやいいよ。そのお金は少しでも自分の為に使ってくれ。俺が道具屋に行くのはどんな物が置いてるか確認の為だしな」
「本当に何も買わなくてもいいのか? 俺も少しだったら……」
レオンもいい奴すぎだろ。2人と友達になれて俺は幸せだな。
「まっ、俺そのままでも強いし」
わざとニヤニヤしながら言う。これで2人ともお金を貸したく無くなっただろう。
「……ムカつくがその通りだな」
「ハハッ、だろ?」
そんな話をしていると見たことある店の前まで来た。道具屋だ。
「じゃあ入りますか」
「そうだな」
「はい!」
俺達3人は店の中に入った。2人が買い物をしている間に売っている商品を確認したが、ゲームで売られていたアイテムと変わりなかった。
ただ違った点はゲームの終盤とかに追加されるアイテムが普通に売られていた。……まあ、高すぎて買えないけどな。
そしてその日はそのまま解散して寮へと戻った。
翌日
「それでは今から班ごとに並んでもらう!」
俺達一年は闘技場へ集められダンジョンについての軽い説明を受けた。
話をまとめると、ダンジョンを踏破したらダンジョンに入るための許可書を貰えること。
これから数日間かけてダンジョンを攻略することだ。
そして現在班員で集まれと言われた。
俺は5班と書かれた紙を渡されたので5と数字が書かれている場所へ行けばいいのだろう。
周りを見るともう何人かで集まっている。人数はバラバラで10人くらい居る班もあれば4人くらいの班もある。
俺もそろそろ移動するか。
「貴様! リック・ゲインバース!」
5とかかれた旗の前へ行くと見知った顔の人がいた。彼の名前はヒーデリック。交流試合で戦った人だ。
ふぅ、なかなかきついな。
これからダンジョンを攻略するまでの間ヒーデリックと一緒か。ちょっとしんどいな。
「リック君!? リック君と同じ班なんて楽しみです」
そしてもう1人はソフィアの様だ。満面の笑みだ。
女の子と一緒の班になって喜ばれるなんてウレシイナー。
もう俺はダメかもしれない。
他の人は? と思い辺りを見渡すが人影はない。
キョロキョロしているとマーリンがこちらに向いて歩いてきた。
「よし、全員揃ったな。私が貴様らの引率者のマーリンだ」
俺以外の2人にマーリンは挨拶した。
これで全員だと? それに引率者がマーリンだと?
「チェンジで」
俺は髪をかきあげふっと笑ながらそう言った。
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