第21話 トラップには気をつけよう
「グオォォォ……ォッ!」
ゾンビの様なアンデットモンスターが出てきた瞬間俺の炎とヒーデリックの剣が襲う。
「はい、今のは俺の方が早かったですぅ」
「何を言っているんだ! 僕の剣が切った後に君の炎が当たったんだ!」
「あぁん? オメェのヘナチョコ剣より俺の魔法が弱いって言ってんのか?」
俺はヒーデリックにメンチを切る。
「誰がヘナチョコだ! 貴様の下手くそな魔法より僕の魔法の方が強いに決まっているだろ!」
そしてヒーデリックもメンチを切ってきた。
お互いに頭をぶつけて睨み合う。
「あ、あの……」
「なら次で勝負だ! ソフィアお前が審判な!」
「いいだろう! ソフィアさん僕の剣技その目に焼き付けてくださいね!」
俺とヒーデリックは次のモンスターを見つける為に走って移動するのだった。
何故こんなにも喧嘩腰になっているのか。それは数時間前に遡る。
「よし作戦を決めよう。つっても俺ら3人だとヒーデリックが前衛で俺が中衛そしてソフィアが支援って形になると思うがな」
ダンジョンに入ってすぐ俺は2人に話しかけた。
「ああ、お前が仕切っている事以外は僕もそれに賛成だな」
「ええ、私もそれがいいと思います」
ヒーデリックとソフィアはこの作戦? でいいらしい。
マーリンは口を挟む気がないのか少し離れた所からついてきている。
まあ当然だろう。これは俺たちの試験だ。
そんな時に最初のモンスターに遭遇した。ゴブリンだ。今確認できるだけで5匹はいる。
「じゃあさっき話ようにやるぞ!」
「言われなくても!」
ヒーデリックが腰に差してある4本の剣を一斉に操り前へと出た。
「エンチャント! スピード!」
ソフィアがヒーデリックに支援魔法をかけた。
魔法陣が浮かび上がりヒーデリックを包み込む。すると先ほどよりもヒーデリックの動きが速くなった。
「はぁ!!」
ヒーデリックはゴブリンのうちの一体に切りかかった。
「アイススパイク!」
俺はヒーデリックが一体に集中できるように周りにいるゴブリンに攻撃を仕掛ける。
それを繰り返しているとゴブリンの群れを全て倒すことができた。
「よっしゃ!」
初めてモンスターと戦ったが通用してよかった。実際剣や杖などの装備品を持っていなかったから不安ではあったが、なんとかなった事に一安心する。
「ありがとうございます。ソフィアさん。あなたのおかげです!」
戦闘が終わるとすぐにヒーデリックはソフィアに声をかけた。
「いえいえ、私だけの力ではありません。お2人がいなかったらゴブリン達には勝てていませんでした」
「そうだぞヒーデリック。お前は俺に感謝しろよ」
「そうだな、貴様も平民にしては良くやった褒めてやる」
ムカッ!
なんだこいつ一々嫌味を混ぜないと話せないのか。
「お前も貴族のくせによく逃げ出さなかったな。褒めてやるよ」
売り言葉に買い言葉だ。
そして俺達は戦闘が終わる度にこんな感じの会話をしていたんだが、段々ヒートアップして現在に至ると言うわけだ。
「ガァァ!」
瞬殺だ。俺とヒーデリックの攻撃が先程とは色の違うゾンビに当たる。
確かゲームではアーミーゾンビとかって名前だったかな?
「待ってくださーい」
ソフィアが後ろから走ってきた。
「どうでした! 僕の剣技は!」
「その、今来た所ですので……見てませんでした」
「そ、そんな」
ガーンとショックを受けるヒーデリックを見て少し笑ってしまう。
「ハハハ! ザマァないな!」
するとソフィアに脛を蹴られた。
「リックさん調子に乗りすぎです。もう少し私の事も考えてください」
ヒーデリックがショックを受けている短い間に小さな声で俺に話しかけてきた。
「わ、悪かった」
心なしか首が苦しい。首輪の効力だろうか?
「すみませんでした。勝負に熱くなり過ぎて少し周りが見えていませんでした」
ヒーデリックがソフィアに謝罪をした。
「大丈夫ですよ。これから気をつけてくださればそれで構いません」
ソフィアがヒーデリックに微笑みかける。
「ソ、ソフィアさん。あなたは正しく聖女だ」
そしてヒーデリックがソフィアの方へ一歩前へ踏み出した瞬間カチッと言う音が聞こえた。
「ん? なんだ?」
不審がっているヒーデリックの横の壁が空き矢のようなものが見えた。
「危ない!」
俺は魔力で体を強化して一気にヒーデリックにタックルをする。
「何をするんだ!?」
ヒーデリックは俺に対して怒るが俺が矢が刺さっている壁に指を向けるとすぐに黙った。
「……すまなかった。助かった」
意外だ。ヒーデリックが頭を下げてくるなんて。
「しかし、トラップですか。多分私達は今このダンジョンの中層辺りにいるのだと思います」
いつの間にかそんな奥深くにまで来てしまったらしい。
「あぁ、そうだな。これからは注意深く行動しよう」
俺はソフィアの言葉に頷く。
「そうだね、ところでマーリン先生は?」
ヒーデリックがある事に気づいた途中まで一緒にいたマーリンがいないのだ。
「先程まで私の後ろから着いてきていましたが……」
「一度マーリンと合流できるまで待つか?」
今のところ問題なく進めているが、ダンジョンの奥にいるボス。あいつだけは別だ。このまま進んで行ってボスと出会えば全滅だろう。
「……それがいいだろう。もし合流出来なければ上に戻る事も考えた方がいいかもしれないな」
ヒーデリックの言う通りだ。あくまで俺達が強気に進んで行けていたのはマーリンというこの世界の頂点に位置する魔法使いがいたからだ。
「では休憩しながら警戒。これでよろしいですか?」
「おう」
「はい」
ヒーデリックと俺は頷く。
「ですが疲れましたね。これからボスがいる部屋まではどれくらいかかるのでしょうか?」
「どうだろうな。でも奥に行くに連れてモンスターが強くなっているのは確かだ。入り口からここに来たまでよりかは確実にかかるだろうな」
「そうだね。防御力が上がってきているのは確かだね。もう一撃で倒すのは厳しそうだ」
実際俺も余裕な感じを出していたが、そろそろキツイと感じ始めていたがヒーデリックもそれを感じていたようだ。
「……マーリン先生と早く合流したいですね」
そう言ってソフィアが壁にもたれかかるとカチッと言う音がした。
ソフィアは動かないが顔がどんどん青ざめて言っている。
「なぁ、今の音なんだ?」
「さ、さぁ?」
とぼけるソフィア。
「だが、何も起こってないぞ」
ヒーデリックはあたりを見渡して警戒するが確かに何も起こっていない。
「ソフィアがボタンを押しっぱなしにしているからだろ。……ソフィア。お前をここに置いていく選択をしないといけない事が大変悔やまれる」
俺はソフィアの方を向き神妙な面持ちで話しかける。
「ふざけないでください! 守ってくださいよ!」
首が締め付けられる。
「うっ」
「そうだぞ! ソフィアさんを見捨てるなんてありえないだろう!」
ヒーデリックからも怒られた。
7割冗談なのに……
「じゃあ全力で迎え撃つぞ。ヒーデリック何がきてもいいように準備してくれ」
俺は魔力を全身に回して体を強化し、いつでも魔法を撃てるようする。
ヒーデリックも剣を操り準備をしていた。
「よし、せーのでボタンから離れてくれ」
「分かりました」
俺の言葉にソフィアは頷く。
「せーーのっ!」
ソフィアが壁から離れるが何も起こらない。
「何も起こら……ッ!」
ヒーデリックが声を出している途中に俺達に異変が襲いかかった。床が抜けたのだ。
「そっちのパターンかよぉぉ!!」
俺達はみるみる下へと落ちていくのだった。
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