第9話 登場!

「まずは今日交流試合が開催できた事に喜ぼう。上級生達も君たちの戦いを見ているが遺憾なく実力を発揮してくれ。……ところでDクラスの代表はどこだ?」


 どうもリンです。

 今日は交流試合の日なのですが、まだ私達のクラス代表であるリック君が来ていません。

 クラスのみんなでリック君を探したのですがどこにもいませんでした。


 生徒会長の目つきが鋭くなり、私達は恐怖で震える。


「すみません! リックが何処にいるのか分からないのです」


 クラスを代表して、レオン君が答えてくれた。


「逃げたに違いない」


 Bクラス代表の人が笑いながらそう言った。それに続くように貴族の人達は笑った。


 闘技場の観客席に座っている人達からも笑い声が聞こえてくる。嫌な空気だ。それに……


「リック君はそんなことしません!」


 腹が立った。リック君が馬鹿にされているという事に。出会ってそう時間は経ってないが、彼は私を庇って代表になってくれたのだ。

 そんな人が逃げ出すわけがない。


「ふむ。君の言い分もわかるが、彼が来てないのも事実だ。それにもう開催時刻だ。そうだな、後1分だけ待とう。

 それ以内にリック・ゲインバースが来なかった場合、別の代表を立ててもらう」


「……分かりました」


 私は頷く。そして会場中がざわざわとし始めた。


 平民のためにそんなに待ってられないとか、どうせ逃げたんだなんて聞こえてくる。


「安心してくれリンさん、もしもリックが来なかったら俺が代わりに出るよ」


 レオン君がそう言ってくれた。でも……


「大丈夫だよ、私が戦う。友達を馬鹿にされて黙ってなんていられない」


 そう言うとレオン君が驚いたような顔をした。


「……リンさんは意外と勇気があるんだな」


 ふっと笑う彼を見て私もつられて笑ってしまった。リック君が私を庇ってくれた、まるで童話に出てくる勇者みたいだった。

 その背中を見て、私も少し勇気が持てたみたいだ。


「さて、もう時間だ。Dクラスの者は……」


 私が覚悟を決めていると空から声が聞こえてきた。それに合わせて会長の声が止まる。


「……カ…ン………カ……ウ……」


 謎の声だと思い会場中がざわめいた。


「……カインの馬鹿野郎ーーー!!!」


 上から声が聞こえる。ふと上を向くと何かが落ちてきていた。


「……誰か助けてくれ〜!! 死にたくないーー!!!!」


「えっ!?」


 リック君だ。空から落ちてきたのはリック君だった。情けない声を出しながら空から猛スピードで落ちてきていた。


「危ない! 下がってくれ、私が受け止める!」


 生徒会長が前にでた。


「はぁぁぁぁ、ふっ!」


 凄い、生徒会長の魔力が高まっていくのが分かる。


 そしてドーーーンというデカい音と共にリック君が落ちてきた。


「っ、2人は?」


 土埃で2人の様子がわからない。


「いててててて」


 この声はリック君だ! 良かった無事だったんだ。

 少しすると土埃が晴れた。


「怪我はないか? リック・ゲインバース」


「きゅん。やだ、イケメン」


 そしてそこにはお姫様抱っこをされたリック君とお姫様抱っこをしている生徒会長の姿があった。


「ってか俺って間に合ってます?」


「ああ、一応間に合っているな」


「やった! 寝る間も惜しんで修行した成果を見せれるぜ!」


「そうか、それは是非とも見てみたいな」


 そのまま喋るんだ。


 この事は私達、というか会場にいる人全員が思っていると思う。


「貴様! 生徒会長に無礼だぞ!」


 一番に声を上げたのはBクラスの代表生だった。そしてそれに続くかのように周りの人も失礼だぞ! とかの野次を投げかけた。


「ヒーデリック。今日はお前を倒すぞ」


 Bクラス代表の姿を見た、リック君はそう宣言した。


 ……というかまだ降りないんだ。


「貴様、貴族である僕に対して宣戦布告とはいい度胸じゃないか」


 ヒーデリックと呼ばれた青年はそう答えた。

 宣戦布告された事に腹を立ててリック君が生徒会長の上で抱っこされている事を忘れているようだ。


 ……生徒会長も何も言わないんだ。


「ハッ! 宣戦布告〜? まさか!」


 彼は人を馬鹿にしたような顔をしつつそう言った。会場にいる人は驚いていると思う。

 まさか貴族の人に対してここまで言える平民がいるなんて思ってもいなかったからだろう。


「だったらなんだ!」


 ヒーデリック君は怒っている。


「勝利宣言に決まってんだろ」


 ビシッと指をさしてそう言った。


 かつてないほどのキメ顔で彼はそう言った。カッコ良い。

 貴族に対しての勝利宣言なんて前代未聞だ。


 …………でも、でも、それは生徒会長にお姫様抱っこをされてなければの話だ。


 私達は代表にする人を間違ったのかもしれない。


 後ろを見るとDクラスのほとんどが頭を抱えてため息を吐いていた。


 どうやら私が思っている事をみんな思っているみたいだった。

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