第31話 出発
今日は待ちに待った休日だ。
俺はダンジョンの攻略の為に準備をしていた。
普通前の日までにやっとくだろって? 俺は昔からギリギリにならないとやらないタイプなんです。
お陰で持っていく為の武器や防具は買っていない。
というかお金がないから買えなかったんだけどね。仕方ないので鞄にパンツと下着。少しの回復薬を入れて準備終了だ。
「よし! 準備完了!!」
これでいいかと言えばダメだがこれぐらいしかすることがないもの。
「外で待っておくか……」
エリカとソフィアとの合流時間は9時だったはずだ。
時計を見ると針は8時30分をさしていた。
少し待つくらいがちょうどいいだろう。広場で待ち合わせしたので早速向かうとしよう。
広場に向かうととても高級そうな馬車がポツンと真ん中にあった。
ま、まさかあれって……
「リック! 早いわね! 今日は冒険日和ね!」
馬車の横には人がいて声をかけてきた。相手はもちろんエリカだ。
にしても近くにきてわかる。なんて豪華な装飾なんだ。
この装飾の一つの宝石をくすねただけでも俺の装備一式揃えるんじゃないか。
「お、おはよう。そうだな、これは?」
そう言って馬車にゆびをさす。
「何って馬車だけど? 普通でしょ?」
流石王女様。すごい財力だ。
「ふ、普通か。なんかいいのかな? 俺がこんな高そうなの乗っても」
「いいに決まってるでしょ! ほら乗って!」
そう言うとエリカに背中を押されて無理やり馬車の中に押された。
「ソフィアはまだきてないのか?」
質問しつつも内心では当たり前かとも思う。だってまだ集合時間よりも前だ。
「あー、ソフィアね。なんかお腹が痛いから今日パスするらしいわよ」
「そうなのか? まあ体調不良なら仕方ないか」
携帯がないとこういう時に不便だよな。誰かに会って伝えないといけないし。
「ええ! じゃあ2人で行きましょう!」
そう言って馬車の扉を閉めようとするとガシッと外側から手が出てきた。
「何言ってるんですか? ほら、私は元気ですよ」
ソフィアが満面の笑みで入ってきた。
「あら、そう? 私たち2人で行ってくるから休んでいてもいいのよ?」
「いえいえ、エリカさんこそ大丈夫ですか? 頭とか痛くないですか?」
「私は大丈夫よ! 心配してくれてありがとう!」
2人は満面の笑みで会話しているが怖い。なんというか殺気を感じる。
俺は空気だ。今の2人とは関わるべきではない。俺は空気、俺は空気、俺は空気。
「ちょっと! これからどこのダンジョンに行くのよ」
1人で空気に徹していると突然エリカから声をかけられた。
「あれ? 言ってなかったっけ?」
「聞いてないわよ」
「あっ、ごめん。てか場所も知らずによく来る気になったな」
「悪い?」
「いや、悪くはないけど……で、場所だがシャリアーテ王国の端に位置するダンジョン。名前は死の砂漠だ」
「死の砂漠……」
ソフィアが小さくつぶやいた。
「ああ、戰の神であるアーレス様の信者がアーレス様の槍を祀ったと言われているダンジョンだ」
「そこにいく目的は?」
「槍の回収だよ。ある人に頼まれたって言ったろ?」
まあそれとは別の目的もあるんだけどね。
「じゃあ俺は御者の人に場所の案内するから2人は中でゆっくりしててくれ」
「えっ!?」
2人はそう言ってお互いの顔を見ている。
「んじゃあまた後で」
俺は2人の返事を待たずに馬車を降りた。
女の子同士の方が話しやすいこともあるだろう。
「今日はよろしくお願いします!」
そして俺は御者の人に声をかけるのだった。
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