第24話 捜索

「はぁはぁはぁ……マーリン先生!! いらっしゃいますか! いたら返事をしてください!!」


 私はダンジョンを走る。そして何度も声を出す。索敵魔法をものにできてない今、私がマーリン先生を探し出すにはこの方法しかない。


「グルルルッ」


「これで何度目ですか!」


 3つの首を持つ四足歩行の獣。ケルベロスとの何回目かの遭遇に嫌気がさす。


「フラッシュ!」


 光を爆発させケルベロスの目眩しをする。


「グルツ!?」


 光でケルベロスの目を潰している間に横をすり抜けマーリン先生を探す。


 ……はやく、はやく見つけないと。


「マーリン先生!! どこにいるんですかー!」


 じゃないとリック君とヒーデリック君が……


「マーリン先生!! ……行き止まりですか」


 イライラする。最深部というだけはあってダンジョンの作りも複雑だ。こんなことしてる場合じゃないのに!


 道を戻ろうと後ろを向くとケルベロスが3体いた。


「「「ガルルルルル」」」


 3体とも臨戦体制だ。


 ……ルシフェルさえいれば、この状況を解決できるのに。

 ただここでルシフェルを召喚すると下で戦っている2人が不利になる。


「ホーリーアロー!」


 どれか一体まで倒すことができたならその隙に逃げることができる。


「ガルゥ!」


 しかしケルベロスは光の矢を回避されてしまう。


「……流石に素早いですね」


 独りごちるが状況が解決するわけではない。私1人で3体相手はやはり厳しいか。


「グルっ!」


「しまっ!」


 気付くのが遅れた。


 私死ぬんだ。お父さん、お母さんごめん。2人の分も生きていたかっけどここまでみたい。


 諦めて目を瞑るが衝撃はいつまで立ってもこない。


「何、諦めているんだ! ソフィアさん!」


 目を開けるとヒーデリック君がいた。


「な、何故ここに!」


「リックにソフィアさんと共にマーリン先生を探してくれと言われてね」


「それじゃあリック君は1人で……」


「あぁ、だからはやく探そう」


 そんな話をしていると残りの2匹が襲いかかってきた。


「邪魔だ!!」


 ヒーデリック君は3本の剣を操り華麗にケルベロスを撃破した。


「急ごう!!」


「はい!」


 私達は上を目指して走り出した。




「ここは……」


 見たことある場所に出た。私達が罠に引っかかた場所だ。


「どうやら戻ってきたみたいだね」


「はい。……マーリン先生!!」


 叫んでみるが私の声がこだまするだけだ。返事はない。


「もっと上にいるのでしょうか?」


「多分そうだろうね。すぐに上ろう。……ん? なんだこの音は?」


 ヒーデリック君が首を傾げる。私も耳を澄ましてみると地ならしが起こっているみたいな音がしてきた。

 そして次に地面が揺れ始めた。


「なにが?」


 辺りを見渡していると突然ドーン! と爆発音の後に少し先の天井が崩れた。


「何が起こったんだ!?」


「わかりません!」


 ヒーデリック君と慌ててしまう。土埃が少しずつ晴れてきた。


「貴様ら無事か!?」


 なんとマーリン先生だった。


「マーリン先生!? 今までどこにいたんですか!」


 本当に今までどこにいたんだろう。上から穴を開けて落ちてくるなんて普通じゃない。


「転移魔法で飛ばされて入り口に戻ったかと思えば魔族が2人ほど待ち伏せをしていた」


「魔族が2人も!?」


 ヒーデリック君は驚いている。私も声には出していないが驚いている。

 マーリン先生は魔族を2人撃退してここまで来たのだろう。なのに傷が殆どついていない。


「アタシの事はいい。リックは? ヤツはどこにいる」


「そうだ! リックが危ないんです! 四天王のクラウンと今ボス部屋でソフィアさんの召喚獣のルシフェルと共に戦っているんです!!」


 ヒーデリック君が慌てた様子で状況を報告した。

 最初はあんなに嫌いあっていたのに今は心の底から心配しているみたいだ。


「ッ!」


 この感覚は……


「ッチ! 四天王だと……! 何故ここに。まあいい直ぐにリックの元へ向かうぞ!」


「はい! ソフィアさんどうしたんだい?」


 私の様子を見てヒーデリック君が声をかけた。


「……今、ルシフェルとの魔力の繋がりが切れました」


 ルシフェルが聖霊界に帰ってしまった。つまりルシフェルがやられたという事だ。今、リック君を守るものは……


「なに!? 貴様らアタシの後ろにいろ!」


 そう言うとマーリン先生は地面へ向けて魔法を放った。


 地面の底が抜けどんどんと下へ落ちていく。


 私達の体が地面にあたる寸前でマーリン先生の魔法で体が一瞬ふわりと浮いた。


「……え?」


 そこで私達が一番最初に見たのは胸をクラウンの手によって貫かれたリック君の姿だ。


「おっと新しいお客様も来られたのですね⭐︎彼はこの通りでございます⭐︎」


 クラウンは戯けた調子だ。


「う、嘘だ」


 また目の前で人が死ぬなんて……


「ソフィアさん何を!?」


 私は気がついたらリック君の前まで来ていた。


「な、なんで……私が戻るまで生きてるって言ったじゃないですか……」


 リック君に声をかけるが返事はこない。


「ふむ⭐︎」


「生き返ってください! お願いですから! 目の前で人が死ぬのは嫌なんです!!!」


 奴隷の首輪に魔力を込めるが彼は目を覚さない。


「安心してください⭐︎次は貴方ですよ⭐︎」


 クラウンがリックをボトッと落とし。私へ向けて構えた。


「……やらせるか」


 マーリン先生が間に入って止めてくれるが、今はそんな事はどうでもいい。


「ほう、貴方はなかなかできますね⭐︎」


「貴様に褒められても嬉しくなどない!」


 2人は戦闘を開始した。


 リック君の体を触ってみる。


 ほんのり暖かいが、心臓は潰されている。


「ヒール! ヒール! ヒール!!」


 私は回復魔法を使う。死者には効果はないが、まだ生きているかもしれない。

 心臓が潰れているだけでもしかしたら治るかもしれない。


「ソフィアさん、リックは……」


 ヒーデリック君に手を握られ止められる。


「なんでですか! 約束したじゃないですか! 死なないって! ペットなんですから……約束くらい守ってくださいよぉ……」


 私はただ力無く泣くことしかできなかった。

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