第3話 状況の整理

 あれから俺達は学生寮まで来た。地図もあったしゲームで何回も見た風景なだけあって意外と迷うこともなかった。


「リック! 部屋番号何番だった?」


 寮母さんから貰った鍵に書いてある数字を見ると156号室と書いてあった。


「156号室だったぞ。カインは?」


「僕は289号室だって、カインとは階層も違うんだね」


 まあ知ってるんですけどね、一応聞いてみただけだ。俺は3階に部屋があるが、カインの部屋は6階にある。



 何故同じ一年なのに階層がこんなに違うのかと言うとカインが貴族でリックが平民だからだ。


「貴族と平民なんだ当たり前だろ? それよりも荷物を置こうぜ、重くて腕が千切れそうだ」


 俺は大袈裟なリアクションをとる。


「はははは、そうだね。それじゃあ荷物を置いたらここに集合で」


「おう!」


 カインの背中を見送ってから俺はすぐに自分の部屋へと向かう。


 バタンと勢いよく扉を開けてすぐに座り込む。


「なにがどうなってんだよー!!!」


 本当に何がどうなっているんだ。俺は部屋で寝ていた筈だ。それがなんだってゲームに似た世界にいるんだ? 


 いやゲームに似たと言うのは間違いか、そのままゲームの世界だ。学園の作りやカインの顔、エリカの顔なんて俺がいつもモニターで見ていた顔だ。


 ……それにしてもエリカってめちゃくちゃ可愛いんだなぁ。あんな美少女から蹴られるなんて役得かも。


「ってそうじゃない!」


 ガンっ! と壁に頭をぶつける。


 俺はノーマルだ。断じてMじゃねぇ。異世界転生して気が動転していただけだ。


 そういえばまだ自分の顔を確認してなかったな。一応確認しとくか。



「イケメンやん」


 鏡の前に立ち自分の顔を見た感想だ。髪色は黒できちんとセットされている。


 鏡の前で色々な表情をとってみるがこれは楽しい。この顔を見ると元の顔なんて芋みたいなもんだな。




 鏡の前で今の自分の顔を確認してようやく実感が持てた。今の俺は幻想学園の主人公の親友枠。リック・ゲインバースだ。


 やった! オタクなら一度は夢見る異世界転生だ! これから俺のチートでハーレムな物語が始まるんだ! って普通ならなるかもしれない。だが今回はあまり素直に喜べない。


 このリックというキャラ100%死ぬのだ。俺が転生する前にプレイしていた、ハーレムルートだと最後に殺され。

 もしもエリカルートに進むと大規模なスタンピードの発生で国を守る為戦ってに死ぬ。……とにかく救いがないキャラという訳だ。


 そして死ぬ時期だが最速で3年の夏だ。それまでは死ぬ事はない! と思いたい。


 今が1年の4月と考えるとこのままだと実質余命3年だ。


「………余命3年の異世界生活とか冗談じゃねぇぞ!」


 俺は頭を抱えてしまう。どうせなら転生先は主人公が良かった。死ぬ事ないし。めちゃくちゃ強いし。

 ……だが起こってしまった事はどうにもならないか。


「……こうなったら生き残ってやる! 絶対に生き残ってやる! 見てろよ運命! 俺がリックの死という運命をぶっ壊してやる!」


 やってやる! このまま死ぬなんて勘弁だ。それに俺はリックの事が好きで、ゲームの中でどうにかリックが助かる手段を探していた。

 その時はそんな方法なかったが今は違う。俺の行動次第でリックが助かる可能性も十分にある。


「運命だろうがなんだろうがかかってこいや!」


 俺は自分に気合いを入れる為にもう一度叫ぶ。


 瞬間、横の部屋からドンっと壁を叩かれた。


「あっ、すみません」


 どうやらうるさかったようだ。


 ……出鼻は挫かれたが絶対生き残ってやる。そう決心しながら俺は部屋を出たのだった。

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